一族山
入鹿神社付近から
一族山 小栗須コースの地図

一族山
小栗須コース

 一族山の各コースの中では最も展望が良く、変化に富み、熊野古道の雰囲気も味わえる。惜しむらくはコース上に滝が無い。下りでしか歩いたことが無いので下りながらの紹介。小栗須は入鹿の里の中心地である。

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★小栗須コース
参考時間・・・山頂-0:10-小栗須分岐-0:40-林道横断-0:30-後呂山-0:10-国道

 山頂から西尾根を下る。すぐに植林から石楠花林に変わる。急斜面の石楠花林はコースがはっきりしないが南側の植林との境辺りに道がある。下方には白倉の崖が見えている。小さな鞍部で小栗須コースと、小滝・大河内コースとの分岐。小栗須コースは分岐付近では倒木が塞ぎ、荒れているように見えるが、すぐにはっきりとした道となる。東斜面を絡みながら標高を下げていくと次第に痩せ尾根となる。標高650m付近では樹冠が切れて大きく展望が開ける。一族山で最も展望の良い地点でないかと思う。北西方にはチラチラと熊野川の河原を交えて奥駈道のある大峰山脈が笠捨山から玉置山を挟んで大森山、更に西には果無山脈の山々、正面にはツエノ峰とその上に遥かに霞む大台ヶ原、最高の展望である。


遠く
玉置山

ツエノ峰
後方は笠捨山など

随所に
道標

 再び照葉樹林の森に潜り込み稜線を辿る。蟻の戸渡りのように尾根上に長い露岩が連なっている箇所があったが危険ではない。稜線の西側は大概切れ落ちているが東斜面は緩やかで、細かいコブは東斜面で巻かれて無駄に上り下りしない。コブとの鞍部には道標があることが多い。540mあたりから下では植林。全体的には緩やかな東斜面でも、やや斜面が急な箇所では少し道が細くなっている。

 548m標高点のコブを巻くあたりから右下に林道が見えるようになる。林道三和片川線で、標高440m付近で西側に回り込んで階段で林道に下りる。新しい林道の常と言うべきか、大規模な工事を伴う林道で稜線は大きく削られて法面が固められている。少し東側に歩いてみるとカーブの先に思いがけず鋭角な一族山山頂が望めた。一族山は小栗須方面から望むと非常に鋭い山だった。今まで奥駈道や子ノ泊山、丸山千枚田からのずんぐりした姿しか知らなかったから意外であった。特に駐車スペースは設けられていないようだが広い林道なので脇にマイカーを停めておくことはできると思われる。


蟻の戸渡り状の
尾根

林道直上の
杉の大木

林道に
下りる

林道
横断

丁寧な
道作り

林道から一族山を望む

 林道を後に更に稜線を下る。400m付近で尾根の西側に回り込み、小さな谷筋を下る。稜線を直に下ると大きな岩場があるようだ。この辺りでは簡素な石積みが見られる。谷筋から再び稜線上に戻る辺りは植林の一枚斜面で、道は石積みを交えて斜めに一直線に尾根線へ向かうが少しはっきりしない。小栗須から登るとしたら、ここの不明瞭さがこのコース最大の難所となると思われる。

 尾根線上には小規模な古い山抜けの跡があって、その窪みも斜めに埋めて渡り、その下でジグザグを切って標高を下げる。歩き安い傾斜の丁寧に作られた道である。

 後呂山手前の最後のコブの鞍部で左折し、少し戻るように谷筋を下る。左手の沢から水音が聞こえる。すぐに車道が見えてくるが車道に突き進むと低木の藪である。道は車道のすぐ手前で西に折れ、先ほどの水音の沢が林道の側溝に落ちるところで車道に下りていて、そこに登山口の道標があるが少しはっきりしない。使う人が少なくなっているのだと思う。この車道に下りる地点から林道を僅かに下ると、林道と熊野古道本宮道の古道との分岐があるが、こちらも分かりにくい。本宮道の古道は林道が作られる前は一族山登山道として、古道としての最後の役割を果たしていたようだが、もう歩く人は世界遺産としての熊野古道詣の人だけなのかもしれない。

 古道はカーブのすぐ下は林道の造成で荒れている。ゴミが散乱していたり土砂が流入したりしている。車道から離れると杉の植林の中の落枝に覆われた分かりにくい道だが、苔むした野面の石積みに古道の片鱗を見る。古道は国道に出る最後の部分で林道の法面工事で歩けなくなっており、路盤が続いているのは見えるが手入れされておらず倒木や藪で覆われている。その手前で左に折れて林道に出る。バス停は上地神社前が近い。矢の川登山口に戻っても1時間も掛からない。矢倉川の「紀和層雲峡」とも呼ばれた「せばと」の峡谷を眺めながらの熊野古道本宮道の一部である。


後呂山登山口

杉林の中に石積み

石積みの熊野古道

小栗須登山口

参考文献
吉岡章,大峰山脈(山と高原地図57),昭文社,2000.
新宮山の会,増補改訂 南紀の山と谷,新宮山の会,1987.



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(2011年1月31日分割)