烏帽子山俵石コースの地図烏帽子山
俵石コース
+俵石〜大杭峠

 烏帽子山に登る最短コースであり、廃村俵石を訪ねる道。熊野古道伊勢路から那智山への近道として通られたこともあったようだ。


★栂の平橋〜俵石〜山頂

 高田から栂の平橋の少し先まで車道が延びている。車道終点附近まで道幅があり、行き止まりなので往来する車も無く、駐車スペースは十分ある。

 登山口は歩道の二股になっていて、右の上り坂が登山道である。左は水平トラバースの道で塩見峠を経て佐野につながっているのではないかと思うが、確認していない。一直線の石積みの道を登り、小さな鞍部を越えると左手に盆地のような地形が広がる。植林された棚田の跡が見られる。更に一登りで水のある小さな鞍部をもう一つ越えると俵石椿谷へ下りる。ここは比較的大きな谷である。椿谷北側の道の谷側には石積みが続いていて、道の基礎の法面の工事中のような様相をしているがこれは猪垣で、猪垣に沿った道であったらしい。棚田の用水の跡も見られる。江戸時代後期の紀伊続風土記は、俵石を江戸時代初期の1662(寛文2)年に開墾された里高田村の新田で、村中に俵に似た石があることからの地名と書く。

 木橋で椿谷を渡り少し石段を登ると俵石の集落に入る。入ったところに分岐があり、上の段に進むのが俵石コース烏帽子山方面、下の段に進むのが大杭峠方面。上の段に進む。「昭和」の年号の付いたガス検査の標識のある俵石最後の一軒であった廃屋や家の跡の空き地、石積みの壁が見られるようになる。棚田は全て石積みで規模が大きく、これらの田を拓いた先人の労苦が偲ばれる。石積みの壁は熊野地方でよく見られるものだ。小さな尾根を南側に回りこんだところの空き地には手回し脱水機を備えた洗濯機が2台朽ちている。


登山口

すぐに分岐

石積み

猪垣沿いの道

立派な石垣

洗濯機

猪垣

赤松

 西から南に進路が変わり、小さな尾根の鼻で右折して烏帽子山に向かう。直進すると俵石の南側の地区(中俵石?)への鞍部で大杭峠への道とつながっている。

 尾根の鼻から登るので尾根通しかと思いきや、尾根の南(左)側のトラバースとなり、急斜面に築かれた猪垣を越えると、谷に下りてしまう。この谷の辺りは広く杉の落枝が多く、やや道がはっきりしない。谷を登りきって尾根に出るとアカマツの木が多い。南斜面を絡みながら標高600mの次の鞍部に上がると北側から水音がする。1分ほど北側に下りると水が流れている。この鞍部には洗濯機のあった空き地の次の小尾根上からの道が合流しているが、その道は判然としなかった。

 標高630m附近は南側が岩場の上で、光が峰などの南側の展望が開ける。この辺りから上は天然林である。次第に傾斜がきつくなり、標高830mの尾根の左手には巨岩があり、岩の上から山頂と瓶子岩、光ヶ峯、勝浦の町並みが見える。幾つかの巨岩があるが最も西側のものは祭壇のようなテーブル状である。道のすぐ先には杉の巨木がある。枝分かれがのた打ち回った怪しい巨木であった。道は岩場の連続となり、手もよく使う。ロープ場も何箇所かある。急登である。背後に新宮の街と紀州製紙の煙突の煙の気配を感じるとすぐ先が山頂である。山頂からは新宮・鵜殿方面は見えないが、僅かにここまで下れば望むことが出来る。


630m大岩

大岩から光ヶ峯方面

瓶子尾根

山頂を望む

大岩の上の
怪しい杉の大木

岩場が続く

熊野川河口・新宮の
街が見える
千穂ヶ峰は近い

山頂より
子ノ泊山と
高田の里

★俵石〜大杭峠

 椿谷のすぐ先の分岐から左に入り、やや下り気味である。荒れた沢地形を渡り、ブッシュの茂る狭い谷筋のトラバースとなる。小さな谷筋だがここも水田の跡のようだ。なぜか植林されていないので空が明るい。植林に向かない深田だったのだろうか。再び植林の中に入ると複雑な地形を登り、切通しで尾根を乗り越す。乗り越した先で烏帽子山からの道が下りて来て合流している。

 烏帽子山からの道はほとんど水平道で大杭峠へ向かう道に平行しており、鞍部の直上から下りて来ている。

 小さな谷を一つ渡った先に巨岩が散在している。俵石の名の由来の地域だろうか。巨岩で歩きにくいと言うことは無い。

 しばらくは里高田川の流れから遠いので静まり返った林間を行く。幾つか家の跡の空き地がある。大規模な棚田の跡にも改めて驚かされる。

 里高田川の河畔の道となる。ずっと左岸である。対岸には小さな岩尾根が里高田川の源流に落ちる様が何度も見られる。その岩の様子も俵っぽい。炭焼き釜の跡が多く見られる。この谷の名は紀伊続風土記にある「地獄谷」で無いかと思う。

 瓶子尾根最低鞍部の直下には大杭峠をショートカットする踏み跡があるが、急斜面で荒れておりハッキリしない。

 右手上方の空が明るくなり、沢から離れて5分ほど小尾根を登ると大杭峠に達する。良い水場を持った良い峠だ。大杭峠から先は市野々瓶子尾根コース参照のこと。


間伐仕立て

石積みの古道

石垣と植林

タマネギ状の
岩が見られる

棚田の跡

巨岩散在

参考文献
1)新宮山の会,南紀の山と谷,新宮山の会,1977.
2)熊野列石研究会,熊野列石研究調査報告,熊野列石研究会,1987.
3)仁井田好古,和歌山県神職取締所,紀伊続風土記 第3輯 牟婁 物産 古文書 神社考定,帝国地方行政学会出版部,1910.
4)カモシカ,烏帽子山(2011/01/14)<<カモシカ,2011年3月31日閲覧.



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(2011年4月3日上梓)