一族山
保全林コース
1995(平成7)年から1999(平成11)年にかけて整備されたと言う「大峰生活環境保全林」の一環のようだ。幅が広い遊歩道。石積み・石畳が多用されているのは熊野地方らしい。しかし、その後の維持は入っていない様で、多少荒れている気もする。
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★作業小屋〜山頂
参考時間・・・作業小屋-1:15(シクヤ滝経由1:25)-一族山
作業小屋は登山口の小屋で、中はコンクリ敷きだがソファや木の椅子が中にあった。
作業小屋から幅広の歩道を10回ジグを切ってシクヤ谷に下りる。法面や道沿いのカーブには石垣が積まれている。丁寧な道作りだが、メンテナンスは行われていないようで荒れている感じもする。シクヤ谷に降り立つと谷の上下に分岐している。枝沢を渡って上流に向かうと直接一族山、沢沿い左岸を下りると下流にあるシクヤ滝の下を経て右岸に渡り、ぐるっと大回りして上流で合流する。このシクヤ滝の名前を記した標識や道標は見つけられなかったが、大河内登山口の古い案内板に大体の位置で書かれている「シクヤ滝」で間違いないと思う。3段のナメ滝で上から6m・3m・3m、上段には浅い滝壷がある。シクヤ滝を遠回りしても歩く時間は10分増し程度だ。シクヤ谷右岸の道は荒れ方が直接一族山に向かう道よりひどい感じがする。倒木も多いし、ずいぶん猪が道を耕したり、折角の石畳から石を取り除いたりしてくれているようだ。
作業小屋 |
石積み |
石積み |
最初の沢を渡る |
直接一族山に登る道の途中には川の中にトチの大木があった。次の二股でシクヤ滝を経由した道と合流し、そこから階段が始まる。長い。延々と続く一直線の階段でかなり辛い。これで「遊歩道」とはちょっと道を整備した人のコンセプトが分からない。一族山のように里から近い山なら昔からの歩きやすい傾斜で無理のない山の中を結ぶ作業道が縦横にあったと思うのだが・・・。
一旦平坦になり布引の滝から遊歩道が階段で下りてきて合流する。この階段も結構なもので、布引の滝の駐車スペースから何かしら歩こうとする人は小滝見物以外では一族山を目指そうとする人が殆どでは無いかと思うのだが、そうした人が「遊歩道」を通って一族山に登ろうとしても、ここで大きく下りなければならないことにガックリするのではないか。大峯環境保全林、謎の残る道作りである。
トチノキが あった |
階段には 参る |
平坦な道は 気持ちよい |
アカマツが増える 山頂付近 |
しばらく平坦に東へ斜面をトラバースし、南東尾根に達すると標高を上げ始める。非常に緩やかで歩きやすいとも言えるが、山に登らずウロウロと無用に歩き回っているような気もして「さっきの階段は何だったのだ?」という感じがする。岩が大きく穿たれていて重機で作られた道のような印象である。赤松の木が多い。2000年版昭文社山と高原地図では矢倉川からの道は鞍部から南東尾根を伝って一族山に続いているが、登山道の南東尾根と接している部分では濃密に低木が植栽されて、南東尾根の道は隠されているような状態だった。
この山は台形で、山上には緩やかな地形が広がっている。山頂はその北西端にあるが、まず東側の高まりに南から上がり、沢地形を横断して東南から回り込んで山頂に達する。少し回りくどい登り方だ。山上も植林が広がっている。沢地形には水が流れており幕営も出来そうだが猪や鹿のヌタ場としても利用されているようだ。幅広の道は山頂の10歩ほど手前で途切れていて最後はごく短いが道だか何だかよく分からない林間を進んで山頂に達する。北東方面のみ大きく刈り分けられていて、丸山千枚田と大台ケ原方面が見える。西側は山頂からすぐに杉の植林。
幅広の道が 山頂直前で途切れる |
山頂より丸山千枚田を 見下ろす |
長尾にも千枚田 遠方は大台ケ原か |
★布引の滝〜作業小屋
参考時間・・・布引の滝上-0:45-「遊歩道」山頂側分岐-0:15-シクヤ滝-0:10-作業小屋
布引の滝上の駐車場から大きな木作りの歩道橋でナベラ谷を渡り、布引谷左股左岸を進む。木馬道である。水流が石積みを洗う小沢を渡ってすぐに分岐。ここまで小滝コースと同じ。小滝へは直進。分岐からしばらく水の多い沢沿いだが、一旦尾根の鼻のような部分を登ってから同じ谷の、今度はもう水の無い谷の中を登る。杉の植林だが、ここにもトチの大木が一本だけあった。植林されてもトチの木は残されるものなのだなぁと思う。ただ、この辺り見かけるトチの木、いずれもトチの実は全く落ちていなかった。拾いに来ている地元の方がまだいるのだろうか。猿にはアクが強すぎるだろうから鹿が食べているのか。
この谷はゴロゴロとした丸い岩の多い谷で道は大峯環境保全林ならではの幅広の階段のはずだが、かなり水流で破壊されて擬木が散乱していた。破壊された階段跡を登り続け、標高550m辺りから右側に逸れて水平道となる。平坦で重機も使ったと思われる車も通れそうな幅広の杉の森の中の歩道というものは何となく違和感がある。作業小屋から一族山への道が近づくと階段で急降下して合流する。
シクヤ滝 全景 |
シクヤ滝 上段 |
シクヤ谷右岸の遊歩道 少し荒れている |
ナベラ滝 上から滝壺を見る |
ナベラ滝 中間 |
保全林コースではないが、書き加えておく。林道三和片川線の一部である。
林道は作業小屋から下は全てアスファルトで舗装されている。作業小屋のあるシクヤ谷からナベラ谷を大きく回りこんでいるが、アスファルト道は歩くにしてもスピードが出てしまう。途中にショートカットのような古い道の分岐があったが確かめていない。ナベラ谷に入ると法面に氷瀑がいくつか掛かっていた。標高400mあたりの道路のすぐ下に大きく緩やかなナメ滝があり、これが大河内登山口の案内看板にあるナベラ滝ではないかと思う。ナメ・ナメラも一般用語とは言えないのかもしれないが、熊野地方ではナメのことをナメラともナベラとも言う1)。
保全林コース入口付近の対岸の山肌は樹木が燃えるように広がっている。ここまで「きらずの森」に含まれているのかどうかよく分からないが、美しい森の姿である。大河内コース登山口にある紀和林研グループの地図によると、布引谷右股ではナベラ谷が本谷でシクヤ谷が支谷のようだ。
作業所やモノレールの乗り場を過ぎて布引の滝の上の駐車スペースに着く。大きな木橋を渡ると小滝コース、鳥居をくぐって裏手の小山に登ると不動明王の祠がある。
★補記(2013年3月)
再訪して作業小屋から保全林コースを歩いたところ、標高550m付近の山腹に新しいコンクリ舗装の林道(作業道?)を見た。一部が保全林コースと完全に重なっていて、矢ノ川コースの鞍部の土場から登ってきて、山の南側に向かっているようである。道標は移設されていた。
参考文献
1)熊野市史編纂委員会,熊野市史 下巻,熊野市,1983.
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