奥双珠別岳(仮称)から見た
(林業界の)双珠別岳
二つの双珠別岳の位置の地図

登山界の双珠別岳と呼ぶよりは
奥双珠別岳と呼びたい1389m
(日高山脈主稜線から)

(林業界の)双珠別岳(1347.2m)
ニセクシュマナイ沢

 冬に沙流岳から見て尖っていたので気になっていた三角点のピーク。名前は「地図がガイドの山歩き」のチロロさんに教えていただいた。三角点名は「双珠別」。地形図に山名の記載は無いが1931(昭和6)年の「北海道の山岳」には、「双珠別」と書かれていた。尤もこの本には、三角点の点名に「岳」と加えただけのような山名も並べられていて、地元の生活者にもそう呼ばれていたのか疑問が残るものではある。登山者が山名を決めてきた日高山脈らしいと言えば、そうなのか。「登山界の双珠別岳」は同じ稜線のもっと東寄りの日勝峠に近い、1389mの丸いピークだそうな。

 どちらも地形図に名の載らない双珠別岳だが、個人的にはこの1347mの双珠別岳を「双珠別岳」として、1389mピークは「奥双珠別岳」としたら良いのではないかと思う。どちらも立派な山であり、同名であるのは紛らわしい。展望は非常に良好。


 まずは沙流川の本流を渡渉するが、平常であれば危険なことはなさそうな浅さである。ニセクシュマナイ沢よりもう一本上流から双珠別岳の南東面に上がる沢の方(竹の沢)が歩行距離では短そうな気がしたが、駐車スペースの近さからニセクシュマナイ沢を選択した。

双珠別岳ニセクシュマナイ沢地図 台風10号の影響で斜面崩壊や倒木が多数見られた。狭い小さな沢の信じられないような高さにまで洪水の跡が残っていた。二回、大きめの二股を右に入る。二回目の二股からまもなく核心部となる。

 岩は青い粘板岩で滑りやすいが、細かい傷が入ってデコボコしているので、そこそこフリクションは効いて、それほど危険はない。函もないので滑っても濡れる心配もない。スパイク足袋ではやや歩きづらい。

 核心部には滝が七つほどある。真ん中の四つめ以外は簡単に巻ける。四つめもそれほどではない。一番はじめは1mほどの落差で滝というほどでもない。二つめは左のヤブからだが真夏なら直登も出来そうだ。三つめは水の左脇を簡単に登れる。四つめは大きな門状で右の枝沢から急斜面を登って越える。五つめは左のヤブから。最後は3mほどの階段状で簡単に直登出来る。三つほどの滝の写真をこのページの一番下に挙げてみた。

 ヤブ漕ぎはそれほどではない。水が一旦標高1000mほどの傾斜の緩い地すべり跡で一回切れて、また現れて再び切れるのが1250mで、それより上では完全にネマガリタケだが、左寄りに登るとそれほどの密度でなく稜線に出、潅木の薄いブッシュのみとなる。ハイマツはまばらにあるだけだ。再び現れる上部の水の流れる岩はツルッとしているので、下りる時は時折ヤブ絡みになりたい。

 山頂は低い潅木に囲まれた狭い草地で、なぜか金属製円筒形の灯油タンクが転がっていた。出来れば回収して欲しいけれど座る所がないので丁度いいといえば丁度いい。南方は沙流川をはさんでペンケヌーシ岳が大きく見える。あまりないアングルで「ペンケヌーシ岳とはこんな山だったのか」と言いたい気分だ。幌尻岳も見える。西方には占冠村の牧草地が樹海の中にぽつんと見える。森に攻め込まれそうで印象的だ。北側直下にあるはずの双珠別湖は見えない。トマムスキー場とサホロスキー場が人工的な光景だ。夕張岳、芦別岳、大雪山系、十勝連峰まですっかり見渡せる。


★川名考

 沢の名前「ニセクシュマナイ」は明治23年頃の「北海道実測切図」に「ニセイケシュオマナイ」として載っている。ニセィケソマナィnisey kes oma nay[崖・の下端・にある・沢]と思われる。ニセクシュマナイ沢川という川の名は北海道河川一覧に載っているが、ニセイケシュオマナイの誤記ということは無いのだろうか。入渓点のニセクシュマナイ橋の少し下流の清瀬覆道から上流の鹿鳴トンネルに掛けて、沙流川本流が谷を深く穿ち崖の連続する峡谷になっている。橋の名にある「ニセクシュマナイ」では、nisey kus oma nay[崖・の対岸・にある・沢]と逐語訳しそうだが、確かにニセクシュマナイ川合流点の対岸も崖ではあるが、対岸の崖が全体の峡谷の中で特別顕著と言うことは無い様に感じる。また、全体で見れば沙流川左岸だけでなく右岸にも崖がある。ニセイケシュオマナイなら「下端」なので、その上流側を崖と見なしていたということになるが、ニセクシュマナイ川落ち口より下手にも崖は続いて言えそうに思われる。どうもよく分からない。或いは地形図上で崖地帯の下端となる清瀬橋の所の、北海道実測切図ではユルペシュペと書かれる川の別名ではなかったかとも考えてみる。


F4

F5

F2
手前は台風による
流木と斜面崩壊

参考文献
田中三晴,北海道の山岳,晴林堂,1931.
北海道庁地理課,北海道実測切図「沙流」図幅,北海道庁,1893.
北海度土木協会,北海道土木部河川課,北海道河川一覧 河川図編,北海道土木協会,1984.
北海道土木協会,北海道土木部河川課,北海道河川一覧 河川番号編,北海道土木協会,1984.



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(2003年11月11日上梓)