美幌岳
広尾・大丸山から望む

美幌岳(1121.4m)

 三角点にのみ名前のある山だから名前は無いに等しい。十勝海岸の美幌川源流にあるから美幌岳という名前だが、美幌集落からは見えない。裏手の丘の上からなら見える。松浦武四郎の東蝦夷日誌のトモチクシ・タンネソ沖からの構図の挿絵には富士形の「ヒホロ岳」が隅の方に顔を出しているが、この山と同じなのかどうかはよく分からない。

 南側の猿留川からの方が林道が奥まで入っているが、南面はヤブが濃いことが多いし、長い林道が倒木などで通れないとイヤなので北側の東広尾川から登った。


★東広尾川北西面直登沢

びほろだけのちず 広尾から入渓点に向かう道は途中の山フンベあたりでは柵のない放牧地になっており、牛馬が自由に横断しているので注意が必要である。標高150mほどの東広尾川の砂防ダムの手前から林道になりゲートがあるが、ゲートは開放されていた。

 標高330mほどの砂防ダムの手前まで林道は通じている。砂防ダムの下に寄せるように分岐があり、ここが広くなっていて駐車できる。更に100mほど、砂防ダムの横まで林道は車が走れる状態だが駐車スペースはもうない。

 砂防ダムの先には林道・作業道跡が続いているが、非常に荒れている。すぐ先で川の本流が林道跡の上を流れている。河原の石は片麻岩が多い。作業道跡は標高500mあたりまである。

 標高400mの屈曲部は北側に明るく笹原が開けていて、合わさる枝沢の水流がすぐ20mほど上で湧き出しているのが見える。地質図で見るとここは砂礫の堆積。この開けた斜面はスカスカした山崩れの跡なのだろう。周辺のダケカンバの生え方が日高山脈らしい雰囲気だ。

 鹿の足跡が多い。河原と作業道跡を行きつ戻りつしながら坦々とした河原の沢を進むと、450m二股の本流(左)に突然、二段10mの滝が現れる。右岸に作業道跡があるが、やや高いところを通っているので巻き上がるのが面倒なので下段を簡単にシャワークライム。上段は深い釜を持っていて登れなさそうなので横の緩いヤブを登る。


入渓点の様子

片麻岩?

400m屈曲部 開けた枝沢

F1

 F1から先は岩盤が現れるようになる。小滝もいくらかあるが困るようなものはない。標高540mの傾斜が掛り始めるあたりは辺り一帯で湧き水が小滝になって噴き出して、不思議な雰囲気だ。分流も多いが一番左を行くようにする。

 このすぐ上で水は伏流になってしまう。水の流れない巨岩の沢を登っていくと遷急点があり、急に空が開けて小石の平坦な沢となる。標高620mからの傾斜の緩い部分だ。相変わらず水は流れておらず、静まり返った谷中の河原の両脇は、草原にヒョロッとしたダケカンバが生え揃っている。正面には美幌岳の西の肩がオニギリ状に聳えている。

 標高650mあたりから細々と水流は復活し、720mあたりから急に両岸が迫って切り立ち、ガリー状の沢となる。7mほどの登れなさそうな斜めの直瀑(?)があるが、右から巻ける。すぐにひとつ左から支流を合わせ、しばらくナメ滝が続くが、標高840mの三股で終わりである。結論から言えばこの途中で左から合わさった支流を登って北のコブとの鞍部に登った方がヤブ漕ぎは少なくて済みそうだ。

 三股のすぐ上でもう一度、左へ枝沢を分け、まもなく水がなくなる。後は沢地形を左寄りに詰めていく。ヤブはチシマザサでなく細めのクマザサで、鹿が上下しているのか、微妙に薄い部分がありそれほど労なくヤブを漕げる。途中の木には鹿の毛がこびりついていた。冬毛に換わる時期だったのだろう。

 稜線に上がると明瞭な鹿道があり、それを伝って山頂へすぐである。山頂では笹はスズタケとなりさらに低くなる。ハイマツも少しある。山頂は3mほどの高さのダケカンバ林であったが葉が既に落ちていたので四方を見渡せた。


水が噴き出している

水のない河原

斜めの滝

ナメが続く

山頂まであと少し

広尾岳方面の展望

広尾の街から十勝海岸の展望

山頂の様子

 東側には三角点「美幌」(1058.0m)のピークが大きい。「次はあのピークへ」と言いたくなる。南方の豊似岳方面はガスがかかっていた。南面の猿留川の流域には山の斜面に網目状に付けられた作業道が痛々しい。北方の広尾岳は見えたが更に北の楽古岳はガスがかかっていた。西方にはアポイ連山がよく見える。


★下山(北北西の尾根からその北面沢)

 下山は北のコブを経由して北北西に延びる尾根を標高750mの鞍部まで下り、そこから北のコブの北面沢を下った。

 尾根上は明瞭な鹿道がある。鞍部付近は濃いネマガリタケのヤブになっているが距離は短い。この尾根上からほぼ真西に見える日高山脈主稜線上の両側に土の崖マークのある850mの鞍部は赤く草付きが枯れているのが見えた。日高山脈の風の強さを示していると思う。

 北面沢は上部では幾つかの素直な小滝があるだけである。上部の水流が洗う岩は赤い色が沈着している。鉄分なのだろうか?標高600-500mの屈曲部が山の斜面が迫って薄暗く、滝が連続するが、いずれも巻けるかそのまま上下できる。標高420mあたりから作業道跡があり、そのまま地図上の林道に合流し、登りで通った水の流れる部分も経由して砂防ダムに戻る。


赤く剥けた鞍部

赤っぽい色の沈着した岩

シマホッケ?日高変成岩帯?

小滝

小滝

小滝

参考文献
松浦武四郎,吉田常吉,新版 蝦夷日誌 上 東蝦夷日誌,時事通信社,1984.



トップページへ

 資料室へ 
(2006年10月20日上梓)