札幌の円山の地図

円山(225m)

 北海道内でも有名な、札幌市内でも有名な mo-iwa モイワ。山田秀三をしてモイワの代表格のように言っている。しかし、これまた有名なことにモイワの名はお隣の一回り大きな藻岩山に移ってしまった。藻岩山にも昔は別のアイヌ語の名前があった。

 登山者は多く、層が厚く、登れば市民に親しまれていることがよく分かる。冬も登る人が多いので大雪の後でも少し時間をあければ、普通の長靴やスノトレ程度の靴で登れる日が多い。ただ、ストックは古いゲレンデ用でも持参した方が良いだろう。

 アプローチは札幌市営地下鉄なら東西線円山公園駅下車すぐである。大型商業施設マルヤマクラスのすぐそばが地下鉄出入口で、そこからいくつか交差点を渡ると円山公園に入れるので、公園奥の大師堂を目指す。大師堂も円山山頂も円山公園の中と言えば中である。動物園コースと八十八ヶ所コースの二つがあって、円山公園からでも、円山西町の入口から入山しても、山頂までの所要時間に大差はない。一周をオススメする。休憩抜きで一周、1時間程度である。


★八十八ヶ所コース

 大師堂の前に円山登山の案内看板がある。看板の裏には毎日登山しているような人のストックなどが多数掛けられている。ここまで自転車で入る人も多い。円山川の小さな流れを古めかしい大師橋で渡ると大師堂であり、右に入る。たくさんの石仏が奉納されており、樹叢も深く少々気味が悪い感じもするがメゲてはいけない。わずかに登るとお稲荷さんもある。しばらく石仏群が続くがカツラの大木などもあり、次第に明るくなっていく。


大師橋・大師堂

皆がルートを触る案内板

 夏場はシマリスはよく目にする。エゾリスも見られたらラッキーである。都会のリスはカラスに襲われるそうで、シマリスはそうでもないが、エゾリスは最近目にすることが少なくなったような気がする。

 樹木には名称プレートが掛けられていて木の名前を学習できるが、ハリギリのプレートばかりが多いような気がしてしまう。ハリギリは大木になると針がなくなるので「?」と思ってしまうので印象に残りやすいのか・・・?カツラの大木も多い。

 一登りで尾根の鼻を回り込むと少し傾斜が緩む。石仏にある88までの番号が良い励みになる。この辺りからはほぼ尾根上となり、道は尾根のわずかに南側をトラバースするように平坦についているが、尾根上にもハッキリした踏み跡がある。台風で風倒木が発生すると見晴らしが良くなるが、ひっくり返った木の根が続いている光景は少し悲しいものもある。円山球場で野球が行われている時や、冬場の円山競技場でのスケート大会の応援の声もなかなか風情がある。

 一旦、少しだけ下って馬の背。ここにはベンチと古びた野鳥観察案内の看板がある。アカショウビンも載っているが、この看板が立てられた頃は円山でもアカショウビンを見られることが少なくともあったのだろう。時代の流れを感じる。小鳥は多い山なので、この看板はまだまだ役に立つ。

 最後の登りは少しきついが、すぐ終わる。山頂稜線はT字路になっていて右は動物園コースですぐ先に奥の院があり、左が山頂。山頂はすぐ。まず、山ノ神の石碑があり、その奥の岩場が山頂だ。三角点は岩場のすぐ手前にあるので、実際の標高としては三角点の標高より50cm以上は高い。

 展望は東の方が大きく開ける。江別の百年記念塔や羊ヶ丘の札幌ドームは指呼の間だ。条件が良ければ増毛山地や夕張山地、日高山脈の山々も望まれる。夜に登るとススキノの異様な白さが妙に印象的だが夜景としても一級だ。藻岩山が少し木の間に隠れる位置にあって、それより山側はあまり展望がない。麓の啓明中学校で運動会をやっている日などは人の動きを見ているのが面白い。


大木が多い

馬の背

山頂から

★動物園コース

 大師橋から大師堂に進まず、円山川の溝に沿って進むと円山川の右岸に道がある。近年、大師堂の前を経由せずに動物園コースに至る円山川の左岸にも木道が整備された。円山動物園の正門の下のあたりで合流する。

 このあたりは札幌では珍しい杉の林である。もちろん植林であるが、北海道神宮での必要性からか比較的古い時期から継続的に植えられたようで、いろいろな世代の杉の木がある。北海道の森にはあまりない珍しい雰囲気である。スギの木自体には寒過ぎるのか、少し元気がない印象を受ける木が多いような気がする。円山養樹園という名で、北海道における近代林業用の様々な樹種の試験的な意味を持つ見本林となっていた時代があったらしい。

 動物園入口の喧騒が終わると右岸一本となり、動物園側には高いフェンスが続き、円山川の流れもフェンスの向こうとなってしまう。動物園の排水を受ける大きなプールが森の中に見えたりする。森自体は円山から動物園の敷地の中まで続いている。道は円山の裾で湧水帯にあたり、秋には枯れる小さな流れをいくつも横断する。簡易な木道が敷かれている部分もある。道が少しぬかっていたりすることもある。湿った環境が好きなカツラの大木が多い。大きな株が続くと本当に圧倒される。

 二ヶ所、やや大きな登りがあって階段がある。後(上側)のものは動物園のフェンス沿いの荒れた急傾斜の階段だけだったが、近年山側を迂回するように付け替えられてずいぶん歩きやすくなった。これを登りきると、円山西町からの入口と合流し、本格的に登ることになる。ここにはベンチと野鳥観察案内板がある。

 八十八ヶ所コースより人が少ない。明らかにバードウォッチングや植物観察を目的にしていると見える人はこちらの方が多い。自分にはどちらの方が鳥が多いとか植物が多いとか、違いはよく分からない。また、階段も八十八箇所に比べると多い。全体的には比較的なだらかな良いコース取りの道だと思うのだが、一部に直線的な階段があり、筋力の弱った人には下りは少し恐いかもしれない。

 八十八ヶ所大師堂の奥の院に裏から着けば、もう登りはないも同然。奥の院は札幌軟石で作られたもので、閂がいい味を出している。いたずら書きは止めて欲しいと願う。すぐに八十八ヶ所コースと合流して山頂である。


円山川 下流を見る

カツラの巨木

動物園コースの森

★円山西町入口


奥の院

 地下鉄円山公園駅発の円山西町方面行きのバスで円山西町2丁目下車、登山口まで歩いて5分程度だが、遠方から登りに来るなら地下鉄円山公園駅からそのまま登った方が理に適っている。

 バス通りなど、大きな通りからここの入口は少し探しにくいかもしれない。舗装道路の突き当たりの路地に入っていくような入口だ。すぐに動物園コースと合流する。合流地点ではまだ最後の人家の屋根がよく見えている。

 山頂の岩場は明治初期の砕石の跡だと言う。昔はもう一回り高かったのだろうか。


 とにかく登山者が多いので(と言っても雰囲気的には大雪山の方が込んでいるように思ってしまうが)、ゴミを捨ててしまう心無い人や単に山のマナーを知らない人(もちろん街中だってゴミは捨てない方が良い)がいる一方で、札幌市などの公園整備も入っているのだろうが人のゴミまで拾う篤志家も多く、登山道はきれいである。でもやはりゴミは不覚でも落とさない方がいいですね。

 山頂は時間帯によってはカラスの溜まり場になっており、直下をたくさん走る自動車より大きく響く鳴き声で多少の恐怖まで感じさせられたり、実際に少し荷物から離れると中を荒らされてしまうこともある。しかしほとんどいない時間帯もある。そういう時は、毛が抜けかけてもう鳴く元気もなさそうな弱ったカラスが寂しそうに眺めたり近寄ってきたりすることがあるけれど、ここは心を鬼にして無視を決め込む方が賢明であろう。

 昔は双子山方面から登る南登山道もあった。痕跡はまだ残っているが全行程を通じて非常に急傾斜で、中間付近には大きな岩場があり、頂上付近ではトイレ代わりにされたりしている。所要時間の短い山であるから便は円山公園のトイレで済ませておけば済む話だ。最悪でも紙は持ち帰ってくださるようになるようにと山ノ神と奥の院に祈っておく。

参考文献
札幌市教育委員会文化資料室,藻岩・円山(さっぽろ文庫12),北海道新聞社,1980.



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(2009年6月25日上梓)