三角山の位置の地図
三角山 (310m)
エエニ

 北海道内外に多くある、比較的新しい山名「三角山」の一つ。洞爺湖町虻田市街地の西方にあるトンガリ山。虻田の東方、入江方面から望むと虻田の市街地の上に聳える。ウサギ山という呼び方もある1)2)ようだ。虻田錨地へのランドマーク。


 点の記(三角点「三角山」)を見ると2001年に道央道の虻田トンネル西口付近から作業道を辿って登っているので自分もそちらに行ってみた。

 洞爺駅から洞爺湖の青い水が流れる虻田発電所の水の青葉川をウェンシリの崖の下で渡って、海岸から清水町のポロナイの谷を進み、道央道のガードをくぐると正面に見えるはずの地形図上の道はなく、道央道に沿って少し西へ進むと道はネマガリタケの藪に消えていた。しかし、路盤は何とか見えた。

 登るに従って藪は薄くなった。稜線が近づくと自然林的林床。スプリングエフェメラルの花々が顔を出していたが、登るに連れて、と言っても僅かだが残雪で覆われた斜面となった。南のコブの上が丁度道央道の真上になり、西尾根上に作業道跡が続いていたが、どこに続いているのかは分からない。路面の状況も雪に覆われていてよく分からなかった。


道央道下手から
西側からはそれほど尖らない

道央道虻田トンネルの
脇から入山

突然、路盤が寝曲がり竹に
覆われる

藪漕ぎ・・・

残雪が現れだす

道央道が山葡萄の蔓の向こうに

 稜線で何度か分岐しながら作業道は登り続け、山頂直下まで続いていた。山頂は東西に細長いが広くクマイザサ(ミヤコザサ?)と樹林に覆われていた。少し虻田側に降りると樹林が切れて有珠方面まで滑らかな海岸線が見通せた。

 下山は北の鞍部から東斜面の青葉町から延びる地形図上の道を目指してみたが、鞍部付近では雪が消えて高い寝曲がり竹が立ち上がり、トラバースも時間が掛かりそうなので西側の谷へ降りた。こちら側は作業道跡がジグザグについていたが、やはり寝曲がり竹(チシマザサ)に覆われつつある。道央道のガードのすぐそばまで藪だった。

三角山の地図


山頂から虻田の街を見下ろす

山頂付近の様子

まだ残雪

★山名考


福寿草が多かった

 アイヌ語の山名として「エエニ」が伝わる3)。森(2008)によると、昭和20年代の地元のアイヌの人からの聞き書きにあると言う。昭和30年代の町史はエエンマと記した4)。明治時代の水路誌には虻田錨地の目印として、エニノポリと記された5)6)。エエニはe-en-i[その頭・尖る・もの]、エエンマはアイヌ語のe-en-iwaを方言を含めた音韻法則に従って発音すると、こう聞こえると言う。アイヌ語のiwaのうち、森(2008)は、ここでは(形としての)「三角山」か「盛り上がり」の意味を当てている。昭和2年の海図にはエイニノポリと記されている。

 海軍水路部によるエニノポリ・エイニノポリはアイヌ語かと思われるが、e- en -iで名詞句として完結する。e- en nupuriではエニノポリ・エイニノポリというカタカナで表される音から遠ざかる。e- en -inupuri〔e- en -i〕 nupuri[頭・尖る・する所の・山]と考えるべきか。室蘭の絵鞆半島にはエニ山が同じ時期の海図からある。登別駅前には二つのエエニがある8)

 三角山にはウサギ山という呼び方もある1)2)ようだが、森(2008)によると昭和20年代に地元のアイヌの人の言ったウサギ山は、三角山北方約1kmの542.6m峰(三角点「笹山」)のことだという。これらの山は1kmほどしか離れていないし、地形図上では三角山は542.6m峰の出尾根のコブに過ぎない。542.6m峰と三角山はウサギ山として一体視されて良いということだろうか。動物のウサギが古来の感覚で山名になるとは考えにくい気がするが、何を指していたかについては分からない。

参考文献
1)竹内正,日本山名総覧,白山書房,1993.
2)徳久球雄・石井光造・竹内正,三省堂日本山名事典,三省堂,2004.
3)森美典,豊浦町・洞爺湖町・伊達市・壮瞥町のアイヌ語地名,森美典,2008.
4)更科源蔵,先史時代,虻田町史,河野広道 et al.,虻田町役場,1962.
5)吉田東伍,増補 大日本地名辞書 第8巻 北海道・樺太・琉球・台湾,冨山房,1976.
6)水路部,日本水路誌 第5巻 北洲及千島列島,水路部,1905.
7)海軍水路部,海図「内浦湾諸分図」図幅,海軍水路部,1927.
8)知里真志保・山田秀三,室蘭・登別のアイヌ語地名,知里真志保を語る会・噴火湾社,2004.



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(2010年5月10日上梓)