山名考
オクロク・熊見山
オクロクの名は日高山脈北部の熊見山の北西の1327.8mの、ペケレベツ二の沢の水源にあたる三角点「熊見山」のある山のアイヌ語の名だとマウンテックの大橋政樹氏が言っていたと聞いたが、私自身は又聞きということになる。
まず、オクロクについて考える。
ペケレベツ二の沢のアイヌ語の名が ok mak[うなじ・の後ろ]で、その訛ったのがオクロクで、ペケレベツ二の沢の源頭の山であることを沢の名で呼んだと考える。ok はペケレベツ二の沢下流左岸の出尾根の付け根の鞍部のことと考える。ペケレベツ二の沢の流れ方はこの鞍部の所で東向きから西向きにUターンする、日高山脈東側の川にしては珍しい流れ方である。
次に、熊見山について考える。
大正4年選点の三角点「熊見山」の点の記には所在地に「俗称熊越山」とある。ペケレベツ二の沢を十勝平野の緩斜面から一段低く細長い出尾根の後ろの山間の隙間で隈になっている山裾にある沢ということで「くま(隈)・こし(腰)」沢のように呼んで、その水源の山ということで「くまこし山」と言っていたのでないかと考える。或いは「くま(隈)・きし(岸)」(この場合の岸は山の斜面の意)の転か。
なぜ熊越山とされる山の頂に置く三角点の名を熊見山としたのかは分からないが、案内人や人足の中には熊越山を「くまみ山」とも呼ぶ人もいたということでないかと思う。熊見山の「くまみ」もペケレベツ二の沢を隈に入りこんでいる所と言うことで「くま(隈)・め(目)」沢のようにも呼んでいて、「くまめ」の源頭にある山と言うことの「くまめやま」の転じたのが熊見山だったのが、そのすぐ横で十勝平野側に寄って里から指呼しやすい今の熊見山の位置が麓での調査で熊見山とされたと言うことでなかったか。現在(2021年)、地形図に熊見山と山名が付される所は日高山脈主稜線の南北の走向から見ると高まりというのも憚られる所だが、十勝側の山麓から見上げれば主稜線の手前側に張り出しているので高まりと見える。三角点「熊見山」と異なる、より山らしくない所に熊見山と山名があるというのは、熊見山という山名が三角点「熊見山」の選点者が選点に際して新たに作り出した山名ではないということなのだと思う。
参考文献
知里真志保,地名アイヌ語小辞典,北海道出版企画センター,1992.
楠原佑介・溝手理太郎,地名用語語源辞典,東京堂出版,1983.
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