屋久島に関する本

 私にとっての屋久島の価値は原始の自然と言うわけではありません。ある程度山について勉強していたら現地に行けば、屋久島の自然が原始でないというのはすぐわかります。南洋に続く植生を見ることが楽しみであります。それと、高いところ。これは山登りする人の基本ですよね(バカだから)。
 また、縄文杉を擬人化するような感情に疑問を持っています。植物が好きで、子供の頃からずっと向き合ってきたけれど、擬人化するまで分かり合えることは植物と動物の間ではありえないのでないかなと思います。植物は動物と違って記憶の生き物ではないと思うのです。

目次(あまり分類に意味はないです・変な分類もあります)

屋久島全般・ガイド 登山
自然 写真集
ルポ
図鑑

屋久島 花風景
日下田紀三/八重岳書房/¥1905/1999.4.20

 季節ごとの風景の中の花の写真集。花自身もきれいに撮られているけれど、背景がまた良い。山から、沢から、湿原から、森から、村はずれから、路地から、海岸から・・・。余す所ない屋久島の花のある風景だ。
(2009年7月25日)
海上アルプス 屋久島連峰
遠崎史朗/雲井書店/¥380/1967.5.28

 小杉谷に教師として来た若い山男による屋久島の紹介。発行前年に発見された縄文杉はまだ載っていない。沿岸集落の紹介は青年らしさがロマンチックでほほえましい。自然に対する紹介でも著者の若々しさを感じる。廃村寸前だった小杉谷以外の林業集落での住民との交流の様子も貴重な記録である。トロッコ観光乗車のルポも貴重だ。赤星昌編「屋久島」の一年前の発行であるが、少し視点が異なりどちらも面白い。また、同じ地点に異なる名称を振っていたりする点が興味深い。若い著者だけにこちらの方が危ういものがあるかなどと感じつつも集落と登山ルートの手書きの地図が柔らかく、温かい気持ちになる。
(2009/7/19)
屋久杉が消えた谷
津田邦宏/朝日新聞社/¥1300/1986.12.25

 「屋久杉の歴史」が分かる本。淡々とした筆致で小杉谷の住人のインタビュー以外の記述では「面白い」と感じたり微笑がもれたり、と言うことは起こらない。イメージや推測でない事実だけが淡々と突きつけられる感じ。そしてその方が向き合いやすかったのかもしれないと感じた。もちろん事実認識を深める役割も十分あろう。決して「面白い本」ではないが、初心者にも分かりやすく、無用な妄想が起こりにくい屋久島の歴史が分かる本ではないかと考える。
(2009/5/10)
屋久島
宮之浦の書店
「書泉フローラ」
にて購入
What a wonderful world! 故郷・屋久島との対話
中島正勝/自費出版・渕上印刷/¥2000/2007.2.23

 積雪期の写真がすごくきれい。きれいとは言っても厳しさの美しさでなく穏やかさの美しさ。そして「やはり地元の人でないと撮れない視点がある」と感じてしまう。写真は写真集だけに確かに上手で、構成も巧みで、お値段からは信じられないくらい、うまく屋久島を見せてくれる写真集だと感じる。これまでの写真集には無かった何か別のものがチラチラと見え隠れするうれしさを感じる。それが何かまでは自分には上手く言葉には出来ない。ただ生まれて住んで登って撮っているだけでなく、本当に屋久島と写真と山が好きなんだろうなと感じた。
(2009/5/10)
好きになっちゃった屋久島 奄美の島々
ニッポン離島探検隊/双葉社/¥1500/2002.10.30

 初めての一人旅を屋久島に選ぶならイメージ作りには役立つガイドブックとなろう。基本は「るるぶ」など以上に押さえてあるし、写真に頼らず、文章そのものが読んでいて面白い。地図がほとんど無いというのも「島なのだから自分の足で更に探してみよう。その中で他の楽しみも見つけてみよう。」という編者の好意の様に感じる。でも何と言いますか、役に立つと言うなら旅行超初心者向けというか「巧いことネタに仕立て上げたな」と言いたくなるネタもあるし、知識を深めたい内容の基礎情報の書き方がアッサリ過ぎる感じがすることもある。でも好きだよ。
(2009/5/10)
至宝の大自然 屋久島 源流を求めて 太田五雄記録写真文集
太田五雄/南方新社/¥10000+税

 これまで発行されてきた屋久島の写真集の多くは「森」の写真に偏っていた。この写真集は確実に「山」と「滝」に偏っている。またこれまでの写真集の山の写真の多くは屋久島の登山道を歩いていればわりとありふれた光景の切り撮りばかりだった。しかしこの写真集の視点は確実にありふれていない、高い山岳技術と努力と待つ時間・繰り返し挑戦する時間とセンスがなければ撮れなかった、まとめられなかったものだ。偏っているとは言っても森の写真もきちんと入っている。滝の写真の多くは本当に貴重で美しい。屋久島に関心のある山登りをする人は、こういう写真集を待っていたと思う。
(2008年7月27日)



わーい屋久島
 2000年から2005年まで発刊されていた現地のガイド会社((有)自然島@麦生・今は拡大されてこんな感じ@原)による無料の季刊誌。20ページくらい。空港など島内の観光スポットや大きな登山用品店で配られていた。
 無料にしては内容が濃かった。少なくとも100円は払ってもいい内容だったと感じていた。また、表紙の絵がとてもほのぼのしていて、すぐに手に取りたくなる上手なものだった。復刊を無責任に期待している。でもインターネットが普及して、数々のガイド会社が出している営業面以上の屋久島の生態学的・文化学的ホームページ記述に役割を引き継がれたのかもしれないと考えたりもする。「生命の島」に重なる部分もあったと思う。
(2008年4月7日)
屋久島の山守 千年の仕事
高田久夫,塩野米松/草思社/\1900+税/2007.5.1

 貴重な記録だと思う。ややタイトルに疑問は残るし、その記述された認識も本当に科学的・客観的な姿といえるのか疑問も残るが、歴史の証人であることは間違いない。大変に厳しい屋久島の山仕事・戦後の復興期の中心で働いてきた人であり、その仕事様・生き様は信じていいと思う。まだ現役の高田氏にしても、あまりに最近には伝わってない姿だ。こんなわずかな過去にこうした現実があった。そうした人が見る屋久島の森の姿の記述は昨今の屋久島観光客に於けるスピリチュアルブームの現実感の希薄さを逆に浮かび上がらせる。こうした人の意見・見方を伝えていかなければならないと思う。

 御高齢でなかなか難しいのかもしれないけれど、生き様や仕事様、屋久島の森の地元の人の捉え方を伝えることが中心になっているこの本に続けて、もう少し細かい情報が記述される続編を期待してしまう。
(2008年4月7日)
サルと歩いた屋久島
山極寿一/山と渓谷社/\1500+税/2006.4.1

 ヤクシマザル研究の自伝的記録。今、我々が屋久島を環境発信地として利用できるのも昔から、一般に注目される具合が今より低かった頃から研究や活動を続けてきた筆者のような人々の努力によるものだと思い知らされる。もちろん屋久島のヤクシマザルの内地のニホンザルとは異なる生態の勉強にもなるし、屋久島全般を教えられる面も含まれる。また外国のサル研究者との交流も多く描かれている。研究活動のあり方を教えられると同時に、屋久島だけを見ていればいいと言うものではないとも思い知らされる。
(2008年2月9日)
屋久島の植物
川原勝征・初島住彦/南方新社/¥2730/2003.4

 何となくレイアウトが検討不十分で作られた感じのする図鑑であるが、とりあえず現地でフィールドガイド的に用いて名前を知ったり固有種かどうかを見たりするには十分である。写真は各植物に一枚しかない。ビニールカバーも付いているので濡れにも強い。対象としている植物は主に平地・里山のもので、高地の植物は少なめ。高地の植物には同じ著者を含む「屋久島高地の植物」がある。写真は少し小さくなったが下の二冊を揃えて持っていた時より軽く薄くなったし、新しい知見も入っているようだし、満足している。
(2008年2月9日)
屋久島の植物
初島住彦・川原勝征/八重岳書房/¥2000/1995.10.25
屋久島花草木 続・屋久島の植物
初島住彦・川原勝征/八重岳書房/¥2000/1997.3.1

 上の「屋久島の植物」が出るまで使っていた。2冊でワンセットにした方が良い感じであった。「屋久島の植物」はビニールカバーがついているが「花草木」はついていない。花草木の方が写真が多く、使いやすかったが2冊で一冊のつもりの方が良いのではないか。もう役割は終えた本なのかもしれない。
(2009年7月25日)
屋久島100の素顔 もうひとつのガイドブック
東京農業大学短期大学部生活科学研究所編/東京農大出版会/\1800+税/2007.3.30

 ガイドブック的内容だが、紹介された場所の地図などが無い。しかし、小さいながら良質で貴重なカラー写真が集められて載せられている。100も章があり、多くの執筆者に分担されて書かれているので、中には掘り込みや見方の甘い章もあるが、大体は文化などの面からもガイドブックを必要とする者が注目すべき良質な様々な角度からの視点が提供されている。説明は細かい字でガイドブックの中では詳しい方だと思うが、それでも概論である。詳しく知るには更にここから自分で歩まなければならない。
(2008年2月9日)
屋久島 世界遺産の自然
青山潤三/平凡社/¥3800/1997.9.16

 写真集的な本では一番面白いと思う。写真集にしては多い文章は深い知識に裏打ちされ、それに合わせた快晴のもとでの生き物を主体とした写真がとにかく美しい。快晴のもとで自分が旅行している気分になれる。知識に豊かになれる気がする。
屋久島の環境民俗学 森の開発と神々の闘争
中島成久/明石書店/\2500/1998.9.30

 屋久島の現状を書いている本としてイチオシ。具体的な集落の地名が多く出てくるのは、屋久島に行ったことのない人にはとっつきにくいかもしれない。告発本的な激しい内容・書き方ではないが、幻想があったら打ち破ってくれるかも。屋久島に原始そのままの自然があるわけではない。屋久杉は「聖老人」ではない。巨木に畏れをいだきながらも生存の為に木を切る人間がいて、人間に押し倒される資源としての木のうちで、産業経済的に価値のないものだけが屋久杉として残っているという現実をしっかり認識しよう。感動しているだけではダメ。これからも長生きしてほしいと願うだけでもダメ。ロマンに彩られず正しく現実を知ることから、これからの屋久杉と屋久島の自然をどうすべきかの議論が出来ると思う。ただ守ってほしい・守らなければと言うだけなら誰でも言える。人間と関係のない自然についてなら、他の本の方が詳しい。しかし現実の自然には重要なファクターとして人間の存在があり、その活動を自然に関連付けて自分のこととして記述している本だ。
屋久島の山岳 近代スポーツ登山65年の歴史と現在
太田五雄/八重岳書房/\3786/1993.5.1

 屋久島登山関連情報を集めた大作。植物の成長の早い屋久島では数年で登山道などの状況が悪くなってしまったりするので、ルート案内として登山の参考書にするには難しい。登山の個人的記録要素が強い。もう少し岳参りの歴史や細かいルートなどを含めた実態にページを割いて欲しかった。副題の通りスポーツ登山を主題とした本なのかもしれないが、数ある特徴のあるマイナーピークへの登路も沢でよいから示して欲しかった。昔は各集落ごとに独自の岳参りに登っていた山があったはずだ。そうした面に続編を期待する。
屋久島 巨木の森と水の島の生態学
湯本貴和/講談社ブルーバックス/\820/1995.5.20

 屋久島の自然について、いくつかの歩道に沿って解説する。わりとやさしくて内容が濃い。入門書として良いと思う。感じのいいイラストマップが特に良い。なかなか区別のつかない照葉樹の見分け方の図はお得かもしれない。
(2003/4/22)
屋久島 美しい豊かな自然
赤星昌/茗渓堂/¥380/1968.4

 小杉谷に人の生活のあった時代の頃の登山道の状況がわかる。山の地名などで、既に最近の書物や地図から失われたものも載っていて興味深い。また、逆に当時から変わっていない事どものこともわかり面白い。屋久島のことに限らず戦後日本のおかれてきた時代を考えさせられた。発見されたばかりであった縄文杉(大岩杉)はジョウモン杉と、カタカナで記載されている。
(2004/2/11)
屋久島の自然
松田好行/八重岳書房/¥680/1977.10.25

 古いガイドブック。題名に「自然」とつけながらも屋久島永田出身の著者が当時の屋久島の方言や習俗(踊りや祭り)、子供がどんな暮らしをしていたかを記述している部分がこの本ならではである。タイトルの「自然」よりは少し昔の「文化」のガイドブックとしての価値があるのではないかと思う。
(2004/2/11)
鹿児島県の山歩き 改訂版
吉川満/葦書房/¥1700/1997.8.15

 鹿児島県の山の情報の本だが、ページの半分近くが屋久島に費やされている。「山歩き」から受ける印象だと登山道のガイドブックを想像してしまうが、登山道だけでなく、時に上級者向け沢登りの記録とヤブ山登りの記録も混じっていて驚かされたし、面白かった。
(2004/6/25)
2009年
終刊
BackNumber

あるみたい
季刊 生命の島 (有)生命の島
 精神世界への傾倒ぶりで少々宗教くさいところがあるし、日本全体の社会の問題に対する発信では、編集フィルターの甘さを感じるものもあるが、屋久島現地発信のメリットは十分感じられる内容だ。特に民俗学的知識の収集と近代の伐採問題のレビューは事態が一段落しても継続して訴え続ける必要のあったことだったと思う。この小さな島だけが題材でよくここまで続いてるものだと思う。(2009年終刊)
フルカラー特選ガイド35 屋久島を歩く
吉川満/山と渓谷社/¥1750+税/1997.7.15

 屋久島の登山に関するガイドブックでは一番役に立ちそうだ。ルートガイド文も一通り全部揃っていて、挿入されている写真はどれも美しく季節感が豊かで、マニアックなアングルからの山の写真や困難な沢登りの末にしか見ることの出来ない滝の写真もちょろっと入っている。オマケ的に道のない山への一言ガイドなどもあり、リピーターにはうれしい。
(2004/10/24)
天行力を撮る
福永法源/アースエイド/\2800/1997.10.20

 新興宗教者が屋久島に旅行した時のエッセイと自然の写真集。旅行とは言え天の声に導かれたことになっている。文章にはモヤモヤしたものが残るが植物の緑色を主題とする写真からは「渋さ」と、彼の宗教的な主張でもある「喜び」が伝わる。宗教を興すようなカリスマ性のある人は、他の分野でも秀でているものがあることが多いようだが、この人の場合は写真だったようだ。
 著者なりに苦しみがあって、教祖のような身分をかたっていても世間並みに癒しを求めて屋久島に行ったのは理解できる。ゴーストカメラマンの疑いも残るが写真も良い形で残した。屋久島或いは地球全体に対する思い入れは典型的なものが多く含まれ、その後の著者と合わせると反面教師となる。著者と著者の興した宗教の世界の捉え方を知ることで学ぶことはある。捉え方は至って普通である。普通の人が、自分ひとりで普通を自覚しているかどうかは疑問の残るところではないか。他者の中に普通を見るのではないか。多数派の直感を代弁することが宗教の始まりなのだろうか。この本から受ける宗教的な主張には反してしまうが考えたいことは多い。



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