心に関する科学の本

「心理テスト」はウソでした。受けたみんなが馬鹿を見た・・・村上宣寛/日経BP社/¥1500/2005.4.4.
 うすうす感づいてはいたつもりだったが、やはりという感じ。それでも以前から変だと言われている血液型別性格傾向だけでなく、今でも心理学の講義で体験的に使われているような検査も俎上である。確かにこうしたテストとて、発表当時でも解釈が簡単なはずはなかっただろうし、一人の心理だって変化する、研究だって進み訂正されていくものだと思う。今も売れているからと言う理由で再生産が続けられるのは経済活動としては宜しいことかも知れないけれど、価値生産的かどうかはちょっと疑わしい気はしますね。心理学って研究も難しそうだけど、発表の仕方も注意が難しいものなのだなぁと思った。心理学界全体で著者がこの本を書くまでもなくもっと早くこの本のような内容を発表すべきだったのではないかという感じはする。そう分かりやすい学問でないだけに、こういうことは心理学全体の方から伝えて欲しい。心理学ってつい、何かを読んでしまうと思い当たることは自分の心の中にいくらでも見つけられるから敷居を低く感じてしまうんですよね。でも「学者」と呼ばれる人がうんと苦労して発表したことなんだから、そんな自分だけの思い当たりで自分がすぐに使えるようなものであるはずがないという疑いは、今後も類似の心理テストは発表され続けるような気がするので忘れないようにしたい。ただそう考えると、心理学の自分にとっての価値が見えづらくなる。病院なんかはもちろんだが、何か工場の作業効率化などでも研究成果が使われているとは思うのだけれど。
(2009年7月19日読み直しました)
「わかる」とはどういうことか・・山鳥重/ちくま新書/\720/2002.4.20
 「心像」の概念を中心にして、頭の中で「わかる」とはどういうことかを説明している。結局「わかる」とは分類して頭の中で占める情報量を下げるということのようだ。新書で「わかる」ことに徹して書いたのかもしれないけれど、もう少し掘り下げた内容まで読みたかった。初心者向き概論という感じがした。関西弁とやさしい語り口はすごく好感が持てた。
(2008年9月読み直しました)
心はあるのか・・・橋爪大三郎/ちくま新書/\680/2003.3.10
 「心を知る」ということについて哲学の面からアプローチする。これを読んでしまった人には申し訳ないが、読み終わって初めて「あ、これは哲学の本だったんだ」とわかった。哲学の本と言うと難しそうでとっつきにくそうなので、哲学と意識させず読ませてしまう外見はいいかもしれない。読み終わった後、講演をまとめたような文体と合わせて少し物足りない気もしたが、これ以上難しいとまた理解できないのだろうな。哲学にはあまり興味はなかったけれど、哲学の意図する所が少しわかったというだけでも読んでよかったと思う。「心はない」ということが結論のようだが、はじめの方でこの答えは出してしまっているような感じだからここに書いてもいいだろう。探しても無駄と言いたいらしい。
 でもね、この人論じたり哲学するには自身の相対主義論を自分で打ち切るのが早過ぎで、その状態で本にしてしまっているような気がする。相対主義論を突きつめてしまうと生きていけないと言う説に異存はないが、神を信じている人や『「愛している」と普段から言うアメリカ人男性』にかなり失礼な書き方がある。配慮が足りないと言われても仕方ない書き方をしている。そういう態度は学者として、教育者として、どうなのかと思う。また、テロに走る人の背景を全く考えずに、絶対悪的に切り捨てていることや、戦争はフェアだからやっても仕方ないと言うような書き方は、人権についても平和についても一面的な理解しかしていない人のようで残念な感じがする。テロの原因には大国の弾圧がある。戦争はフェアでも人殺しと全く変わらず、個人のケンカの延長で考えられるものではなく簡単にやっていいものではない。そういう箇所で読んでて実は分かってない人が書いているような印象を受ける部分もある。そんな人が書いた心についてなんて、そりゃ心は無いと言う結論になりますかな、と言う感じがした。
(2003/4/22+12/13読み直しました)
心の起源・・・木下清一郎/中公新書/\740/2002.9.15
 延々と心の起源を知る為の方法論が述べられていて、「残りのページ数で心の起源についてまで述べることが出来るのだろうか?」と心配していたら、案の定というか、ダメでした。薀蓄科学と言うよりは、観念論になっている。物質世界から生物世界が生まれてきたように、生物世界から精神世界が生まれることを表現しようとしている生物学者の苦悩の姿が浮かび上がる。しかし苦悩だけ書いて本にしてしまったような印象で買ってくやしかった。心の起源が少しでもわかるかと思って買ったのに。
(2003/4/22)
バカの壁・・・養老孟司/新潮新書/\680/2003.4.10
 人生の意味とは、自分のいるべき自分の為の「中道」の位置を探すこと。結局昔から言われているように自らの帰るべき場所の探索と言うのが人生の意味といいたいのかな?
 痛苦の意味は治す意志を常に励起させる為のもの。その意志の回転なくしては病気の身体は生きていけないかもしれない。癌の痛みは昔は癌とわからなかっただろうし。ただ弱って身体も頭も次第に働かなくなるより痛みを感じて動いたほうが次代の人に何かを残せるかもしれない。それは遺伝子の目的に合致するかも。医学の発展も罪作りですな。
 「人間であればこうだろう」という想像が普遍化できるというのは、一元化を否定しておきながら一元化の一例でないか?一元化したがるって何か人間のサガなんだと思う。真理への追求の原動力だと思う。無限を零の代わりに上げているが、これも一元化の一種のような気がする。昔の日本人の「八百万の神」といった800万というのは、零でも無限大でもなく有限のこれくらいが人間としてちょうどいいという、ほんの一例として挙げられた数ではないか?それがいいんだけどさ。
(2004/1/18)
夢の科学・・・アラン・ボブソン著・冬樹純子訳/講談社ブルーバックス/\860/2003.12.20
 夢に関して幻想や余計な想像力を働かせるなといいたいらしい。読んでいてクールと言うより冷たい感じがした。そういう意味で新しい夢の解釈の仕方などを期待すると、かなりガッカリすることになる。「フロイトは間違っている」と言う主題にしても、はじめから間違っていると決め付けて書いているようなところがある。別に私はフロイト信奉者ではないし、フロイトの言ってたことは確かに少し変でないかなとは感じていたが、頭ごなしに「彼は間違い」と書かれると、何となく「あんたも間違ってるんでないか?」と反発したくなった。夢は素人に解釈できるような単純な意味はなかなか掬えないだろうけど、ちゃんとした手法で調べて統計学的に処理すれば分かってくる心理学の材料にはなるものがあるとこの本を読んでも思う。
(2004/5/10)


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