地名考覚書

イモジガエシ・・・今路が峰背(いまぢがをせ)、新道が付いた尾根と言うのが混じっていると思う。鋳物師が進めず退却した所などと言われる。

ウシクビ・・・峰背括(をせくびり/をそくびり)、の約で尾根の撓みを言ったのだと思う。紀州方言地名語彙で「くびり」が尾根の撓みのようである。

ウソゴエ/オソゴエ・・・峰背越(をそこへ)。山の稜線を越える所。

ウトウ・・・峰撓(をたわ)、というのが混じっていると思う。特に後ろに「坂」が付く場合で尾根の撓んだ所を越えていく坂。

ウバガフトコロ・・・輪場が節所(わばがふところ)、と言うのが混じっていると思う。乳母の懐のように風当たりが弱く暖かい所などと言われる。

オウジ・・・峰路(をぢ)、というのが混じっていると思う。山道。

オセンコロガシ・・峰背の切り岸(をせのきりぎし)、と言うのが混じっていると思う。危険な所でオセンという女性が転がされたなどと言われる。

オヤシラズ・・・峰解れ処(をはつれど)、と言うのが混じっていると思う。或いは峰窶れ処(をやつれど)か。

カイフキ・・・崩崖(くえほき)、というのが混じっていると思う。崩れて荒れた斜面。峡崖(かひほき)で谷が狭まった所の斜面というのもあるか。

カッチ/コウチ etc・・・峡内(かひうち)、というのが混じっていると思う。狭まった谷筋の奥に広がる所ということでないかと。

カネカケ・・・矩崖、と言うのが混じっていると思う。垂直のように見える斜面。釣鐘を掛けた所などと言われる。曲崖(くねかけ)もあるか。

クツカケ・・・緊崖(きつかけ)、というのが混じっていると思う。大きな急斜面に隣接する集落名などは特に。

コシラズ・・・崩れ所(くずれど)、と言うのが混じっていると思う。或いは腐れ所(くされど)か。

コジリガエシ・・・崩れが峰背(くずれがをせ)、というのが混じっていると思う。

サツマコロゲ・・・狭端切れ目(さつまきれめ)、と言うのが混じっていると思う。細くなった尾根の突端の落ちるところでないかと。

シオジリ/スバシリ・・・岨尻(そはしり)。山の斜面の末端。

シバ・・・背峰(せを)、窄(すば)、というのが混じっていると思う。背峰は尾根、窄は引き絞ったような頂のはっきりした山と考える。

チゴオトシ・・・違落(ちぐおとし)、というのが混じっていると思う。段差が落ちている所。稚児が落ちた所などと言われる。

ヒョウ・・・撓峰(ひよを)、というのが混じっていると思う。尾根の撓んでいる山越えに楽なところ。

フキコシ/フキゴシ・・・崖越(ほきこし)、というのが混じっていると思う。崖腰で崖の裾というのもあるかもしれない。

ミヅナシ・・・峰の背(みねのせ)、というのが混じっていると思う。特に尾根を越える所。

ミョウ・・・見峰(みを)と、廻峰(みを)というのが混じっている思う。見峰は例えば富士見峰で富士山が見える山、遠見峰で遠くを見る山。廻峰は川とか尾根の回り込んでいるところ(廻)の山。

ヤクシ・・・撓峰越(ひよをこし)、というのが混じっていると思う。尾根の撓んだ所を越える所。

参考文献
中田祝夫・和田利政・北原保雄,古語大辞典,小学館,1983.



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(2021年12月31日スタート)