冷水山の位置の地図

冷水山(3月)
鳩ノ巣山から
冷水山(702.8m)
ワッカナンヌプリwakka nam nupuri[その水・冷たくある・(川の水源の)山]或いは
ワッカナンベヌプリ〔wakka nam pe/pet〕 nupuri[その水・冷たくある・川/もの(川)・の山]

 夕張山地でもかなり市街地に近い山。と言うより、市内の山。レースイスキー場がある。アイヌ語名は「ワッカナンヌプリwakka nam nupuri[その水・冷たくある・(川の水源の)山]」。明治24年の道庁20万図ではワッカナンヌプリ、明治29年の仮製5万図ではワッカナンベヌプリとあった。山腹南東側の若鍋沢がワッカナンペ(/ペッ)wakka nam pe/pet[その水・冷たくある・もの/沢]で、これの水源に当たることによる命名。「冷水(れいすい)」は、その意訳と思われる。「若鍋」は当て字。しかし若鍋沢には主要な炭坑が掘られ、鉄道も集落も一時はあったので、今や冷たい清冽な水の流れを見るのは不可能かもしれない。閉坑した現在(2007)の地形図では若鍋沢の名も消されているが、夕張市若菜地区にその名の痕跡を残している。「鍋」の字が火気厳禁の炭坑で嫌われて若鍋が若菜辺に改められ、更に若菜になったという。昔の地図では現若菜地区の辺りは新千代田と書かれていた。閉坑と共に住民が移転してきたのだろうか。

 植物化石が容易に見られる山として知られる。ヒトの歴史以降では北海道に本来は一種も生息していないカメ(ユウバリリクガメ)の化石も稀に見つかると言う。

 JR石勝線夕張駅から直接アプローチできる。


 夏山ガイド5巻では登山道の標識と登山道があるように書かれていたが、登山道の標識は全く見られなかった。2007年に財政破綻してしまい、街中の公衆トイレさえ閉鎖されている夕張市が、これから冷水山登山道の整備をすることはしばらく不可能であろう。登山者が歩き続けることで登山道を維持するしかない。


冷水山の地図

広域図

夕張駅駅名票

夕張駅とキハ40

 夕張駅を出ると正面にホテルマウントレースイがあるので、これを左に回りこんでスキー場に向かう。回りこむ手前にコンビニがあって便利だ。リゾート用に装飾された幸橋で志幌加別川を渡り、スキー場に入る。

 マウントレースイスキー場の中級者向けの細い林間滑降コース「スリリングライン」に沿って登るのが、登山道として最も適当であり、夏山ガイド5巻にあるコースも、これとほぼ平行していたと思われるが若干異なるような部分もある。スキー場の広い滑走コース中心やスキー場管理用の車道でも登ることは出来るが、「登山道」の方が涼しく登れるだろう。あまりいい道ではないが。

 レースイスキー場の主要運送器であるシャトル6ゴンドラの下の谷間の林間を登る。シャトル6ゴンドラ乗り場(センターハウス)の手前にある沢地形の右岸に道があり、これを登る。斜面の少し上にある、傾かせて作られたログハウスが目印になり、この右側の谷間を登っていく。道沿いにはルピナスが咲いていた。この辺りは歩きやすい。


傾いて作られた
ログハウス

登って来ると
見えない看板

 僅かに水の流れる沢地形を横断してゴンドラの支柱に突き当たると右折して右の支谷に入る。入口付近がややぬかっていた。支谷は暗いが谷の中は乾いている。少し登ると左折する。このあたり、ややヤブがかぶっていた。すぐに二股になっていて直進気味の左に進むとまたゴンドラ下の谷間に降りてしまう。右に曲がって尾根を登り始める。北向き斜面をトラバースしながら尾根を登っていく。どうも作業道跡のようだ。幅が人用というには広すぎる。が、広い幅には草が茂り、人幅だけ鹿が日常的に歩いて維持しているような踏み跡である印象。目印テープの類はほとんどないが、たまに「スリリングライン」の標識がある。しかし、この標識は滑降してくる人向けに付けられているので登ってくると字は見えない。

 標高470mから490mがやや不明瞭だ。フキが生い茂っている。しかしまぁ、どんなに迷っても所詮、大きなスキー場の真ん中である。もがいていれば、そのうち広いスキーコースに飛び出す。490mで別の滑降コースに合流(分岐)し、さらにそのすぐ上で、さらに広いコースと合流(分岐)する。下から向かって右側のスウィンガーズリフトのエリアから中央のダンサーズエリアへの連絡コースを経てディアラインと呼ばれる幅広のコースに合流したと言うことだ。


スリリングコース分岐

 スリリングコースの周りは広葉樹林だが、ディアラインの周りは植林されたトドマツ林だ。スキーコース上もいろいろ帰化植物が茂っていて、イマイチ山の自然と言う気がしない。さらにディアラインがワインディングロードに合流すると、ついに車道歩きだ。高茎の帰化植物すら見られなくなり芝生だけになる。展望が開けるが、夕張市役所の自動車が後ろから追いついてきた時には興醒めを禁じえなかった。車道には石炭は見られるが化石はまだ見られない。

 標高650mあたりから道端に植物化石が見られるようになる。ただ広葉樹の葉っぱの化石で薄いのと、シダ類の化石を見つけることが出来なかったので、イマイチ恐竜時代と言う雰囲気がしないのが少し寂しかった(期待し過ぎていたのが悪いのだがシダ化石もあるらしい)。


夕張市街と
鳩ノ巣山

 ゴンドラ山頂のスカイステーションの手前で右の小山に階段があり、その上が冷水山の山頂である。ベンチ・双眼鏡の類は撤去されたようだ。アリの巣が多い。頂上からは石狩平野がよく見える。メロンだろうか、ビニールハウスが沢山光っている。夕張の市街地とその後ろの鳩ノ巣山はよく目立つ。昔は沢山の煙突から煙が出る光景も見下ろせたのだろうが、炭住はもうほとんど目に付かない。後ろには夕張岳が少し見える。それにしても周辺の山々はあまり自然の山々と言う気がしない。針葉樹植林地が多いし、皆伐斜面も目立つ。地図にない太い林道も多く見られる。炭鉱で使われる木材としてかなり伐られたのだろう。また、石炭運搬で鉄道が充実していただけに戦後の木材需要でもかなり伐られたのだろう。「大自然の夕張」で再興するには難しいものがあるように感じた。

 夏山ガイド5巻にはスカイステーションの後ろ側に、より東側の展望の良い箇所があるように書かれているが、スカイステーションをぐるっと回ってみたがそのような踏み跡は見つけられず、猛烈なネマガリタケのヤブだけが広がっていた。1967(昭和42)年の地形図には南側の若菜地区から林道と登山道が南東を回って山頂に付けられていたので、夏山ガイドに書かれたのはその登山道の痕跡ではなかったかと思う(現在も途中までは点線として記載)。夕張本町からも登山道があったように書かれていたが、これとほぼ同じ位置に、林道があったのは認められた。



階段の
雪覆い

神社参詣用
モノレール跡

 夕張駅前のホテルマウントレースイにはレンタサイクルがある。冷水山登山後の市内散策に良いのではないか。「何も残らなかった」と言われる夕張だが、市内には昔ながらの建造物が数々残り、有料施設に入らなくても建物見物が楽しい。北海道では数少ない山間部に作られた街と炭鉱の「夢の跡」も感じられる。また、温泉もホテル内にある。

参考文献
1)梅沢俊・菅原靖彦,冷水山,増補改訂版 北海道夏山ガイド5 道南・夕張の山々,北海道新聞社,1999.
2)石川孝織,地図で振り返る夕張の変遷,pp4-9,416,地図中心,日本地図センター,2007.
3)夕張探検記,p14,都市文化総合研究会,2007.
4)地学団体研究会札幌支部,札幌の自然を歩く 第2版,北海道大学図書刊行会,1984.
5)池田実,夕張の旧地名,夕張市史 上巻,夕張市史編さん委員会,夕張市役所,1981.



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(2007年8月17日上梓 2008年3月9日写真2枚挿入)