丸山の位置の地図 東大雪の丸山 三角点は1691.9m 多分最高点は1705mくらい

 ニペソツ山に初めて登って以来、この南隣の山からニペソツ山を眺めるのが夢だった。夢を裏切らない素晴らしい眺めだった。しかし、そこへ至る道はあまり気持ちの良いものではなかった。

 東大雪唯一の活火山である。南東麓にある噴泉塔は天然記念物に指定されている。最高地点には標高は打っていないのでハンディGPSが現地で示した値を書いておく。登路に採った沢はどれも赤茶けた沢で暑苦しい雰囲気だった。「丸山」とは芸のない山名だが、この丸山はかなり大きい個性派である。

丸山広域地図


★幌加川六ノ沢から


林道上のビューポイントから見た
ニペソツ山

 林道上のあちこちがニペソツ山の他、ウペペサンケ山や丸山の珍しいビューポイントになっている。

 地図上の終点は大きな土場(第二土場)になっていて、そこから西北西の台地上に続く作業道を歩く。ブルドーザー専用のようで丸太が敷いてあって、路盤に谷地水が流れていた。再び広がって土場があり、そこから左に下りる道を行くと沢を渡っていてそこから沢に入る(標高1000m)。沢は汚い感じで、しばらく行くと沢床が硫黄化合物のせいか黄白色になり、時々温泉のような臭いがするが水温は上がらない。

六の沢地図1六の沢地図2

 二股ラジウム温泉のドームのようなオレンジ色の小さな滑滝を越えると、沢床は赤血色になり非常に不気味。流れている水を舐めると薄い塩味と酸味があるが、それほどまずいわけではない。目印テープにしたがって適当に詰めるとブッシュなくガレ場に出、稜線に上がってからは踏み跡がある。稜線には真新しい大きな熊の足あとがずっとついていた。

 稜線に出てからニペソツ山の展望が広がり、はじめは大平の富士型が見えているだけだが、登るにしたがって槍の様に尖るニペソツ山山頂が見えて来る。ウペペサンケ山から見るニペソツ山はやや鈍角で象のようなイメージだが、丸山から見るものはキッと尖っている。

 地形図上の噴気口には三本ほど煙が出ているが、その勢いは表大雪の旭岳姿見に比べるとかなり弱い。手前には丸く火口が開いていて底には池があった。火口の縁を登り切ると階状土にアカエゾマツの幼木の育つ野原になり、三角点の山頂が近づくとハイマツの間へ。

 丸く平らな三角点ピークより南西の尖ったピークの方が確実に高いが、まっすぐ行くにはハイマツブッシュが邪魔で、一旦南側に回り込んでお花畑の南斜面を経由する。木々に覆われている部分ははっきりしない踏み跡で迷いやすそうな雰囲気だ。帰りにちょっとわからなくなりひやっとした。三角点の標石も帰りにヤブの中で偶々見つけた。

 最高点は狭いが十分展望はある。金属の小さな古い祠があった。

 帰りは目印テープの沢より一本西の沢に下った。水が涌き出ているところでは冷たく普通の水だった。また、それより東側の沢でも途中で合流して作業道に出られそうだ。この沢は合流点では普通の水の沢だった。


六の沢
赤い滝

爆裂火口

三角点附近から
最高点を見る

★幌加川五ノ沢から噴泉塔を経て

五の沢地図1五の沢地図2

・噴泉塔へ

 望山橋の駐車スペースから林道跡を辿る。車は更に1kmほど入るが途中に岩の崩れた切通しがあり、パンクの危険がある。最終の駐車スペースは一台分しかなく、先客の車があると回転出来ないので奥まで無理して入らない方が良さそうだ。最終スペースの先で路盤が崩れていて車は入れない。しばらくは左に巨大なウペペサンケ山を見ながら斜面を登っていく。五ノ沢の対岸には見づらいが滝が見える。

 沢で行止りのようなフキの原につくと、少し沢に沿って上がり、道は対岸に続くのだが少しわかりにくい。対岸に渡ると再び道ははっきりする。その後は斜面のトラバースが続く。作業道の分岐が幾つかあるが、辿る作業道ははっきりしている。岬の先のような所を回りこむと道はハンノキに覆われたほんの少し下りのほぼ水平な道である。一部に崖崩れがあって、トラロープが張ってあった。東丸山が高く見える。


五ノ沢

 右から清流の合わさるところで五ノ沢の本流を渡渉して右岸に移り、更に作業道跡は続く。沢を見下ろすかなり高い所を通っていく。五ノ沢の水はFe3+イオンのオレンジ味を帯びた白濁した流れで、その色の沈着した赤茶色の岩で汚い感じで、水は普通に冷たいのに暑苦しく感じる。少し温泉臭がある。飲む気にはなれない。苔はなく、魚もいない。このような成分が流れ込んでいるのに十分薄まった下流の糠平湖は釣り天国というのも自然の驚異だ。

 30分ほど行くと沢に戻り、沢沿いの巻き道などを行く。五ノ沢はかつてブルドーザーでも入ったのか荒れていて感じが悪い。しばらく行くと滝場がある。滝は二つで一つ目は左に巻き道がある。二つの滝の間にゴルジュ状のところがあり、水が澄んで底が見えていれば大したことはないのだろうが白濁して底が見えないので気持ち悪い釜の縁を渡渉する場所がある。このゴルジュ帯の右岸には時折湧き水がある。二つ目の滝は簡単に登れ、その上は再び川原となる。

(補記2004/7/21 2004年7月に登った函館のsakagさんによると、この滝場の手前から東丸山直登沢出合にかけて右岸に巻き道が存在するそうだ。おそらく当頁の巻き道と連続して五ノ沢の中を殆ど通らずに噴泉塔まで行けるのだろう)

 東丸山北面直登沢の清い流れを左から合わせた先に二股(1080m)が有り、右はオレンジを帯びて白濁した流れ、左は少しだけ赤みのある白濁した流れである。二股の間に上がる踏み跡が続いており、これに上がるとまもなく汚い海岸のような硫黄臭が鼻をつき、薄い灰色の鉱泉堆積物の広原が現れる。この上を歩いていくと池の東面沢側の落ち口につき、すぐに噴泉塔がある。2mほどの槍ヶ岳のような形の乳白色の石灰質の堆積物の塊である。塔の先端からは鉱泉が間歇的に弱く湧き出している。アブや蜂が塔の先端にとまっては鉱泉の成分にやられて死ぬようで、虫の死骸を多く巻き込んでいる。池の水は白い堆積物の上では無色なのだが池は真っ黒である。気泡が多い。池の畔には白い堆積物が積もり始めている所が噴泉塔以外にもあり、これから塔の数が増えていくのかもしれない。

 こうして石灰質に取り込まれた虫の死骸は、いずれ、松脂に取り込まれた虫の死骸がコハクの中に残るように、「化石」になるのだろうか。だとしたら、まさに化石の生成現場に立ち会っていることになる。


噴泉塔と黒い池
(2000年)

 白い成分は炭酸カルシウム、黒い池は元の噴火口。大昔の珊瑚礁がプレートに乗って北海道の地下に運ばれ、そこに丸山という火山が出来、火山活動によって珊瑚礁が温泉水に溶けて地上に噴出しているのだという。塔は年7cmのペースで今も高くなっているという。最も高いところはもう鉱泉の圧力が届かないのか殆ど乾いていて、塔の形成は止まっている様に見えた。

 この黒い池の周りは池から噴出するガス成分のせいか、黒い水面が与える光の効果か、木々や苔の緑色が非常に美しい感じがした。池は東面沢側の北側に落ち口があるのだが、南側も五の沢に落ちそうに低い。


・丸山東面沢から山頂へ

 噴泉塔を後に二股の右を遡っていく。赤白色の色は更に強くなる。しかしこの色は何となく昔からそうだった、という雰囲気ではない。せいぜい十数年前から赤くなり始めたのでないかという気がする沢の姿だ。真相はわからないが。

 すぐに赤水の元の出ている赤色の滝を左から合わせ、これより上では水はきれいだ。しかし水量は少ない。小滝が数個ある。

 1300m付近で左が涸れ沢の二股があり、右の水もすぐ上で消えている。殆ど二股の真ん中が水源と言える。雰囲気的に左が低く、直登沢なので左に入る。

 丸い石がゴロゴロしている枯れ沢を登っていく。ヤブは薄くて、時には沢の右寄りに鹿道がある。目印テープも少ないながらある。1500mで地図にある樽前草の咲くガレ場を過ぎ、熊笹のヤブを分けていくとやがて鹿道の錯綜した草原に出、最後にハイマツの中を闇雲に探すと三角点の山頂着。三角点の周りはすっかり丈の高いハイマツに覆われ展望は全く得られない。

 南西の最高点は踏み跡をたどって行く。ヤブ漕ぎだ。最高点はハンディGPSでは1705mと出た。3年前(2000年)は形をなしていた金属の祠は壊れていた。ニペソツ山の鋭く尖った姿が美しい。大雪山系は十勝岳から黒岳まで素晴らしく望まれる。日高山脈、夕張山地もすっかり見える。丸山山頂から見たニペソツ山の写真はこちら


・丸山南面沢下山


東丸山から見た丸山

 自分にとってもう行きたいと思わない沢ワーストワンだ。詰めから長い距離が高いハイマツに覆われており、ハイマツのないところもヤブの丈が高く、濃く、登ったらかなり苦労することになると思われる。行くとしたら早めに東側の岩礫帯に逃げ込むのが良いか。

 水流が現れる所は鹿のヌタ場で、そのすぐ下で水は赤く濁り飲めるものでなくなる。この後も沢の中は赤く汚いし、赤茶色の粉のついたヤブの絡まる水流の上を避けて沢岸を歩くと、ヌタ場ばかり続く。どぎつい真っ赤なヌタ場もある。支流は赤かったり真水だったりいろいろある。東丸山からの真水の大きな沢と合流してホッとした。この東丸山南西面からの沢沿いには、鹿道でないかと思うのだが明瞭な踏み跡が見えた。この沢でぐるっと回り込んでまで東丸山に登る人はそういないと思うので踏み跡にまでするのは鹿しか考えられないと思うのだが、日高のメジャーな川原歩きよりはっきりしたこの踏み跡には驚いた。

 東丸山からの真水の流れと合流しても沢はまだ赤い。2000年に噴泉塔だけ訪ねて丸山に登らなかった時は噴泉塔の南側(1080m左股)の流れは真水の清流だった気がする。活火山なので、この数年で地下の様子が変わって南面沢に赤色の濁った水が出始めたようなことをあるのではないかと考えてみる。

 赤い沢水の水面を滑って屯っている羽虫の群れに「こんな所に卵を産み落としても育たないぞ!」と叫びたい、暑苦しい沢だった。



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(2002年1月11日六ノ沢から山頂・噴泉塔まで上梓 2003年7月22日五ノ沢から山頂追加 2004年12月23日地図等改訂 2022年2月9日改訂)