富良野岳の位置の地図富良野岳(1912.1m)
三峰山沢

 富良野岳登山道ではエゾルリソウは殆ど見かけなくなったが、沢登りでは見ることが出来る。三峰山沢は、十勝連峰の中では最も古いと言っても新しい火山である富良野岳の沢なのでそれほど美しい沢ではないが、短い距離にナメ滝が続いて楽しめる。


三峰山沢地図★バーデン前〜右股〜山頂
参考時間・・・バーデン前バス停-0:40-作業道跡終点-0:50-華雲ノ滝下-0:50-水切れ-0:40-山頂

 吹上温泉と十勝岳温泉の分岐点のホテル「バーデンかみふらの」の下手から沢沿いの作業道跡に入る。作業道跡の入口にゲートがあり車はここまで。作業道跡はまず堰堤の砂だまりを横断するが、この辺りでは土砂に覆われている。作業道の通水孔が詰まっているらしく、足を濡らして水の少ないヌッカクシ富良野川を渡渉し、左岸沿いに続く作業道跡を辿るが、ここより上では路盤はしっかりしている。まだ腰程度の高さとは言え、フキやヨモギが茂り始めている。

 ヌッカクシ富良野川(と三峰山沢)を渡る辺りの右岸に真水の沢が落ちている。三峰山沢の本流は右股も左股も鉱泉が混じって酸い金気味がするのでここで汲んでいくと良いと思われる。


九重ノ滝

華雲ノ滝

 しばらくは床固工が十数個連なっていて参ってしまう。最後の2個は作業道が切れていて、ヤブをかき分けて越える。最後の一つ手前の堰堤は道が途切れてもそのまま直進し、堰堤のすぐ脇を登るとヤブが薄くて登りやすい。最後の床固工を越えたところが、1180mの二股である。水流は右も左も少ない。右股の富良野岳直登沢は正面に大きな赤い滑滝、九重ノ滝が既に見えている。ゴジラの後ろ姿を見ているような滝の姿だ。滝の規模にしては水が少ない気がする。

 九重ノ滝は5万図では名前がついておらず、上流の華雲ノ滝に「九重ノ滝」と書かれている。2.5万図の記載が正しいと思われる。九重ノ滝の高さはハンディGPSで高さを測ると約35mであった。

 九重ノ滝は下から見えている部分が終わると一旦ゴーロの沢となるが、すぐ上で更に上まで滑滝と滑床が延々と続いている。直登したり、少し巻いたりでぐんぐん上がっていく。一つ一つの滝は火山灰が押しつぶされただけのような岩からなっていたり、鉱泉の成分が厚く沈着していたりで柔らかい為かホールドが少なく、低いけれどやや登りづらい。それでも函自体の高さも深みもなく、ヤブを掴めば足場が少なくても登れるので簡単である。また、雪崩の運んできた丸っこい小石が斜面にばらまかれたようになっていて滑りやすい。滝の連瀑具合は、9つ位だったかもしれない。


滝が延々と続く

色がイマイチ

スノーブリッジもあった
(2005年)

丸っこい
火山礫

 鉱泉成分の沈着したような黄色い岩もきれいでないが、滝壷の底には細かい黄色い砂が積もっていてジャブジャブやるとすぐ濁る。これもこの沢がイマイチきれいでない印象を強くする。次の華雲の滝の手前からガレ沢になる。

 華雲の滝は大きくてとても直登出来そうにない感じがした。右のヤブを漕いで上に出る踏み跡があった。巻きの最高点ではこれから辿る沢が一望できるが、下の方はずいぶん黄色くてイマイチそそられない。この華雲の滝は大きくて空から飛沫が降るような姿のわりに周りが赤茶けた火山礫の崖で、崖の規模のわりに水量が少なく豪快な感じはするのだが余り美しいという感じもしない。雪解け増水期ならそれなりに美しいのであろうか。華雲ノ滝をハンディGPSで高さを測ると約35mであった。

 華雲の滝の前後で左から水蒸気の煙の立つ冷たい真水の沢が合流してくる。湧き水なのかもしれない。美味しい。小滝がまだいくつかあるが傾斜は緩くなる。この辺りの滑滝ではナメの表面の沈着した成分が剥げて、青黒い岩の地肌が見えていることもある。

 1500mの上には地図では岩崖記号が描かれているが岩の崖はなかった。あったのは黄色い火山礫の裸地で、酸い鉱泉が湧き出ていた。滝壷の細かい砂もこの辺りが源だ。ここより上では沢は伏流になったり現れたりを繰り返す。水のかかる岩には苔がつくようになる。2002年に遡行した時に比べると2005年では沢の中が荒れ、黄色い岩が目立ち、楽しく登れる滝が少なくなったように感じた。源頭に小さな山崩れの跡があったので、その影響だったのかもしれない。

 エゾルリソウやエゾコザクラがミソガワソウとハクセンナズナの中に現れ出す。1650m附近に抱きつかないと登れない岩があるが、周囲は草地なので巻くことも出来るだろう。1700m辺りで完全に水がなくなり、しばらくは所々土の露出した丈の低い草原だ。エゾルリソウはこの辺りが一番多い。また、登山道では見たことのなかったカラフトゲンゲやキクバクワガタも見られた。逆に登山道では見られるけれど、ここの草原では見られない植物もあったような気がする。分布の不思議だ。1800m辺りで次第に草丈が高くなりシナノキンバイの大群落があった。また、チシマギキョウも見られる。源頭は最後に草付きの急傾斜になるので、草を抜けない程度に引っ張りながら這うように登っていく。うまくルートを選ばないと岩場に突き当たって面倒だ。


黄色い土に
青黒い岩

華雲ノ滝の巻きから
これから辿る沢

鉱泉湧出
地帯

岩の色で雰囲気が変わる

キクバクワガタ

カラフトゲンゲ

エゾルリソウ

 最後にハイマツを僅かに漕いで山頂まで、あと30秒ほどの登山道に出る。ハイマツの下などにもエゾルリソウの小さな株は生えている。一時は登山道沿いのエゾルリソウは盗掘で絶滅したと言われたが、実は北尾根の山頂のすぐそばのハイマツの下に生えていたのだ。


★左股下降
参考時間・・・登山道-1:00-雄鹿ノ滝下-0:40-作業道跡終点

 左股も登山道の横断する部分から既に水がおいしくない。だが、右股のように岩には特に鉱泉成分は沈着していない(下の写真)。おいしくないのは気のせいなのだろうか。登山道からすぐ下に雌鹿ノ滝があるが上部2m以外は完全にデブリで隠されていた。残念だ。高さも分からない。約15mといったところでないかと思う。右岸からヤブをつかんで下りる。


雌鹿ノ滝は
これだけしか・・・

荒々しい
滑床

雄鹿ノ滝落ち口の
柱状節理上面

雄鹿ノ滝

 その先はしばらく角度の緩い、広いナメが続いている。割れ目の間隔の大きい、荒々しい姿が火山らしい。

 ナメが終わってしばらくすると雄鹿ノ滝40m(GPS計測)。この滝は半島状に突き出た小尾根の真ん中に沢が流れており、その沢が突然切り立った崖で落ちていて、落ち口が明るくて恐ろしい。40mロープでは足りないので懸垂下降はやめて(残置シュリンゲあり)、右岸の角度のきつい樹林をモンキークライムで下りた。滝の落ち口は柱状節理の上面になっており、蜂の巣状の割れ目が観察できる。雄鹿ノ滝は正面から見直すとかなり立派な滝だった。だが、ここも右股の滝と同様に崖の規模のわりに水量が少ない印象だ。雪解けの増水期に見てみたい。

 後は何もない。左岸から何度か真水の冷たい沢が合流して水がおいしい。両岸から樹木がかぶって暗いけれど岩の色が明るい、何ともいえないゴーロを下りて二股に到着し、作業道を辿って下る。

参考文献
三和裕佶,とっておき北海道の山,東京新聞出版局,1995.



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(2002年8月4日上梓 2002年10月1日修正 2005年8月10日改訂)