アゴ野焼き

 山陰の名産で、アゴ(トビウオ)の大型の竹輪状の練り物の焼き物を「アゴ野焼き」という。

 暖かい時期の大掛かりな作業で屋外で焼くので野焼きだというが、練り物を矢竹(箆)に巻いて焼くということの「箆(の)・焼き」だろう。

 アゴは、水面上という高い所にある魚ということの「あげ(上)・うを(魚)」の約まったものでないかと考えてみる。「あげ」は他動詞「あぐ」の連用形だが、高い所にあって水はけのよい田を指す「上げ田(あげた)」のような例がある。だが、「上げ田」の「あげ」は油で揚げるなどの「揚げ」で高い所にあるということではなく、水分が抜けているということを言っているのかもしれないと思う。

 しかし調理の揚げ物も、油の上の方に浮いてきたら取り上げるので、水分を取り除きながら火を通すのではなく上の方にあるということなのかもしれないとも思う。調理としての「揚げ」は油で揚げるものばかりなのに「油で揚げる」と「油で」と断るのは油を用いない揚げの調理法もあるのか。更に考えたい。

附 いただき

 油揚げに米と具材を詰めて炊いたものを米子周辺で「いただき」という。後半の「だき」は「炊き」という調理法を言っていると考える。中身を詰めた油揚げが鍋底で板のように見える「板炊き」か、油揚げの中に入れて炊く「入れ炊き」の転が「いただき」でないかと考えてみるが、更に考えたい。

参考文献
中田祝夫・和田利政・北原保雄,古語大辞典,小学館,1983.



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(2021年8月9日上梓)