やくさんどうのいちのちず
益救参道 (旧宮之浦歩道) 太古杉・龍神杉・風神杉・雷神杉 (屋久島)
やくさんどう

 縄文杉登山者が島の南部の安房経由ばかりで入山するのが面白くない島の北半分の町が、登山者の奪還を目指して廃道になっていた旧宮之浦歩道ををベースに作ったという曰く付きの道。環境との共生を謳い、いろいろ配慮されているのはわかるのだけれど、現在の縄文杉表登山道であるトロッコ道・大株歩道と比べても標高差が大きく距離が長く、観光客の奪還までは出来なかったであろう印象を受けた。平成の大合併が噂される現在でも、既にほとんど完成しているのに作った北部の町もこの道を南部の町の反発で公認できず、宙吊りのような状態で放置されている(2007年7月下旬から龍神杉まで道扱い開始、10月両町合併)。しかし登山道での事故に地元役所の管理責任まで求めない登山者には公認などなくても十分な「登山道」である。

 個人的には新しく付けられた「益救参道」という名より、元の名であった「宮之浦歩道」の方が良いような気がしている。龍神杉歩道という呼称もあるようだが、これもこれまでの屋久島の登山道の名づけ方の他の例と比べると何となく宜しくない気がする。縄文杉への参詣道という意味合いで「参道」と付けたのならば、縄文杉だけが「益救島」ではないし、龍神杉だけの歩道でもない。益救神社の奥宮たる宮之浦岳の祠への参道と言うならば、それは他の歩道とて同じである。「歩道」とて営林署における道の分類に過ぎないが、海岸線の各地区の名をいただいた歩道がある中で宮之浦の名を冠する歩道の名が無いのは調和を欠く気がする。殊更に祀り上げるように「参道」と呼ぶのも美しくない気がする。

 まだ地形図にも記載されておらず、昭文社「山と高原地図59屋久島 宮之浦岳」でも2005年現在、少し誤っている。荒川口から入山して縄文杉を見て、高塚小屋に泊まってこの道を下ると長いトロッコ道を二度歩く必要がなく、龍神杉や太古杉などの有名な屋久杉を見られてお得である。


やくさんどうのちず1
やくさんどうのちず2
やくさんどうのちず3
  • 歩行日・・・2005年10月11日
  • 五万図・・・「屋久島東北部」
  • アプローチ・・・宮之浦から宮之浦川に沿って屋久島総合自然公園へ。そこから右岸沿いの神之川林道を約2qで左へ分岐するシアンヌタ谷への支線へ入る。林道は標高400m付近まであるが、上部は荒れているので車の進入は標高300m程度までにしておいたほうが良さそうな印象を受けた。
  • 参考時間・・・縄文杉-0:05-高塚小屋-1:20-三神杉-1:00-トロッコ道跡終点-0:45-登山口-1:20-屋久島総合自然公園-0:40-宮之浦市街

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★縄文杉--三神杉
参考時間・・・縄文杉-0:05-高塚小屋-0:40-白谷林道分岐-0:40-三神杉

 下りで利用したので下りながら紹介する。このルートでは、水はいたるところで得られる。

 縄文杉から5分ほど更に大株歩道を歩くと、途中休憩用の東屋を経てオレンジ色を帯びた小さなブロック造りの高塚小屋に着く。一帯は土止めの柵が多数打ち込まれ、広場のようになっている。高塚小屋に宿泊する場合、水場は縄文杉のテラスのすぐ下の小沢が最寄となる。高塚小屋は正直な所、さらに1時間ほど上部にある新高塚小屋に比べて単に広さを差し引いてもジメジメした感じで居住性が劣っているような気がする。

 小屋の左手のトイレの奥に益救参道は始まっている。この部分ではまだ「益救参道」と呼ばない方がいいのかもしれない。「旧宮之浦歩道」である。目印テープは多くつけられ、道幅も広く、倒木も他の歩道に比べて少なく、コブは丁寧にトラバースされ傾斜がほとんどなく非常に歩きやすい。森の雰囲気も大株歩道とほとんど同じで巨木が多く気持ちよい。

 高塚山への高まりを前方に見る小さな沢地形の上方にすっきりとした屋久杉があった。勝手にこれを太古杉と勘違いして本物の太古杉を見落としてしまった。

 高塚山のヤブはそれほど濃くない感じで、簡単に登れそうだったが雨天の為、登頂は見合わせ。道は西面を巻いていく。山頂にはアマチュア無線の施設があるという話なので建設時の作業道が残っていてもおかしくないと思ったが、雨天でヤル気がなかったのでこれも見つけることが出来ず。小沢を横断するような部分には石造りの樋が見られ、丁寧に作られた道であると感じる。

 高塚山のトラバースが終わる頃、道の右前方の森の中に建物が見える。林野庁の国立公園管理のためのもののようだ。非開放。太古杉はこのすぐ先にあったらしいが、自分では既に見たと思ってしまっていたので見つけられなかった。小さな看板がかけてあるという。

 次のコブを巻く途中で小尾根を途中で右折して右手の沢を横断する所が少しわかりにくい気がしたが、濃いガスがなかったらどうという事はなかったのかもしれない。次の鞍部は少し開けていて右手の5mほど下がった所にスッキリした屋久杉がある。ここは右手の沢へ下る白谷林道十七支線への道との分岐である。白谷林道十七支線への道の方がはっきりしており、益救参道はロープや小枝で隠してあるような状態であった。十七支線への道は地形図上では縄文杉最短ルートで、事故などが起こった際に救難隊の入るルートとして使われているのだろうか(林道が開放されているのか、歩行できる状態なのかどうかは知らない)。

 鞍部の先で道は少し細くなり一旦尾根上へ上がるが、すぐにまた東斜面をトラバースするようになる。それまでに比べると倒木などが現れるようになり、やや荒れた感じがするが、目印テープは相変わらず十分ある。1357m標高点のコブを巻ききった頃、皆伐された斜面が現れ、これを横断する。ガスがなければ宮之浦の町まで望めそうだが、縄文杉を「参詣」にここを通って、「大自然の残る屋久島」とは違う姿に混乱する人もいるかもしれないと考えたりする。余計なお世話かもしれないが、それはそれで本当の姿を知るということで望ましいのではないかと思う。

 皆伐斜面は1370m標高点付近でもう一度現れる。今度の皆伐斜面は横断した後、左手に回りこんで森に入っていくのだが、直進するような踏み跡も見え、下る場合は注意を要するかもしれない。このあたりは道沿いに湧き水が多い。中でも回り込んだ先の巨岩の下の湧き水は温度が低かったような気がした。


龍神杉

 緩やかに下がっていくとポコッと石造りの立派な道に飛び出す。目の前に龍神杉がある。


★三神杉--トロッコ道跡終点
参考時間・・・三神杉-0:40-架線場(?)小屋残骸-0:20-トロッコ道跡終点

 三神杉というのは龍神杉・風神杉・雷神杉の三本の屋久杉を指す言葉だというが、名前を示す看板などが全くなかったので、一番立派な大きなものが龍神杉であることはわかったが、他がわからなかった。三神杉のうち二本を囲むように周回して道がつけられている。龍神杉は非常に立派で、高さ・太さとも縄文杉を凌いでいるのではないかと思われたが、歩道から見下ろす形になるので縄文杉ほど威圧感がない。龍神杉の東隣にあったのが雷神杉だったようで龍神杉がやや小さくなったような印象だった。歩道の反対側(外側)にあった屋久杉は、見えている裏側がすっかりなく平たい構造であった。この平たい屋久杉が雷に撃たれて部分的に枯れたということで雷神杉かと現地では勝手に考えていたが、帰宅後調べてみると平板のような幹に穴(風穴)が開いているということで、こちらが風神杉だったようだ。案内板ゼロで放置されているとは言っても屋久杉の名札くらいは欲しかった・・・。でも名前がなくても分からなくても立派なものは立派だ。名前と言う情報に踊らされないようにしたい。


三神杉付近の地図

なかむーさんお怒りの2004年新設テラス

 三神杉を後に小沢沿いの道を下っていく。小沢はビワンクボ支流の源頭である。道はまだ苔むしていない白く明るい花崗岩で組まれていた。渡渉する箇所は上手に丁寧に飛び石が組まれている。これらの石組みの道は、雨水に依る洗掘で崩れ、短期間で用を為さなくなる丸太やプラスチック板・擬木によって階段を作る従来の登山道整備を反省し、洗掘に強い昔ながらの石組みを採用し、その石も登山道の周辺15m以内から人力だけで集めてくるというように自然の中に他所からのものを持ち込まないエコロジーな姿勢を貫いて作られたという。ただ、幅が十分すぎるほど広く、ちょっと立派に作り過ぎたのでないかなという気がした。今はまだ新しく作ったという印象をプンプンさせているが、数年経てば石も苔むし、風景によく馴染むのではあるまいか。幅が広すぎるようにも感じたけれど、将来は周囲から土が流れ込むことで、程よい広さになるように設計された幅だったのかもしれない。花崗岩の階段は苔むしても目が粗いので滑りにくく歩きやすい。

 標高1170m付近から沢から西へ離れていく。沢から離れてもしばらく石組みが見られるが、普通の森の土で覆われた斜面に入るとなくなる。15m以内からの石の調達なので、まぁ当然である。1150m付近で右折して、直進するような瀬戸山方面への分岐を見送る。この辺りの看板が全くないのがちょっと不安ではある。目印テープは三神杉より上の部分より、作られた道がはっきりしていると思われているのか、むしろ少なくなっている。

 森の様子は細い喬木が多い。派手に伐採された後の二次林なのかもしれない。このあたりは時折、細い木で作られた手すりが設置されているが、倒木があったらすぐ破壊されてしまいそうなのが、石造りの部分と対照的である。この辺りの部分は新しく作られたものではなく林業の為の作業道に少し手を入れただけのものなのだろう。

 950m付近でビワンクボ支流の右岸に、890m付近で左岸に渡渉する。三神杉では一跨ぎ出来た流れも、ここまで下がるとずいぶん太くなっており、渡渉用にワイヤーが渡してあるが、増水していなければ飛び石で問題はない。この辺りでは森は杉の植林である。

 左岸に渡るとすぐにつぶれた小屋のトタン屋根が無残な姿を晒していた。太いワイヤーが多く散乱していたので木材を下ろす架線場跡でないかと思ったのだが、ただの作業小屋の跡だったかもしれない。

 ここからしばらくは比較的平坦に斜面をトラバースしていく。幾つも小沢を渡渉してなかなか標高を下げない。そして尾根の北東側に回り込んだ先から急に細かくジグを切って下降を始める。立派な石段で作られた急登の階段で、下から登ってくるとしたら、ここが最大の頑張り所になるだろう。大きな落枝が多い。この辺りの石段は既に苔むしており、多い落枝などと合わせて、荒れて人の通っていない印象を強く受けた。

 立派な階段のままトロッコ軌道跡に下り立つ。安房川沿いの軌道と異なりレールが剥がされているのが寂寥感を強く誘う。


★トロッコ道終点--登山口
参考時間・・・トロッコ道跡終点-0:15-トロッコ道跡始点-0:30-登山口


下の方の石畳はこんな感じ

登山口を示す看板

 トロッコ道は荒れている雰囲気だ。ヤブや倒木はさすがにないが、それまでの石段に比べると全く手が入ってない印象だ。道を外す心配がないのではしょったのか、勘ぐりたくなる。横断する小沢は小滝になっていることが多く美しい。最後に、さーっと軌道の周囲が開け、杉の若木が疎らに生えた明るい不思議な雰囲気の窪地を通ると、軌道跡から左手に下りて、再び石組みの階段道となる。ここはビワンクボとシアンヌタ谷を分ける尾根上の鞍部である。旧宮之浦歩道はここでシアンヌタ谷に下りずに尾根上か尾根上の斜面を巻いて屋久島総合自然公園付近まで続いていたらしい。軌道跡はこの先、Ω型を描いているらしく、階段でショートカットする。

 すぐ、遠回りしてきた軌道跡をもう一度横断して、シアンヌタ谷の源頭へ下りていく。ここいらでは目印テープもめっきり見かけなくなり、誤ってシアンヌタ谷でなく西へ向う軌道跡を辿りかけてしまった。

 延々と石畳の道が緩い傾斜で下りていく。石畳は苔むしてすっかり風景に馴染んでいる。何度か渡渉するが、水量が少ないのと小さな谷なので増水を考慮する必要がない為か、小さな石橋が渡してある。本当に丁寧というか丁寧過ぎるように感じてしまう道作りだ。やや薄暗いがまるで「庭園」で、茶席を設けたくなる雰囲気だ。炭焼きか、営林の跡か、コンクリの土管や石垣もたまに現れるが、むしろ「夢の跡」で「さび」を引き立たせる。

 左岸で水流から離れるようになると、左からの土石流跡と思われる開けた箇所を何度か横断する。開けて樹冠がないだけにコシダが茂り、折角の石造りの階段がコシダのヤブで隠れてしまいそうな部分がある。小低木によるヤブは再整備が刈り払いだけでそれほど困難なく出来そうだが、コシダで覆われるとどこが道だか全くわからなくなりそうで、こういう箇所だけは頻繁にコシダを刈り取った方が良いのではないかと感じた。

 登山口は全く何もない。ただの林道の終点である。標高は約350m。縄文杉までの標高差は約1000mである。林道に出て振り返っても、ここが登山口とはすぐにはわからない、地味な登山口だった。遭難しても管理責任を負えない旨の看板が落ちていた。


★登山口--宮之浦市街
参考時間・・・登山口-1:20-屋久島総合自然公園-0:40-宮之浦市街


林道分岐の様子

 林道には標高330-300mの屈曲部を串刺しにするように大きな土砂崩れがあり、車はこの手前までしか入れなかった。標高270m付近に新設された砂防ダムがあり、ここまではコンクリで舗装されていた。

やくさんどうのちず4 神之川林道の本筋に合流し、宮之浦川の右岸沿いを緩やかに下っていくが、地形図から予想される宮之浦川のすさまじそうな流れを眺められる箇所は少ない。たまに眺められても宮之浦川はかなり分流しているようで、流れはドス緑色を呈し(天候の影響もあっただろう)、すさまじかったけれど意外に細い。この林道は森林軌道跡を林道にしたものだという。道沿いの開けた箇所はクサギばかりが目立つ。林道の分岐付近は「仲の下」という。今でこそ何もないけれど、屋久杉伐採盛んなりし頃は更に宮之浦川上流にある「仲の上」地区とともに作業員とその家族の生活があったのだろう。

 唐突に現れる森林管理署の作業小屋、旧宮之浦歩道の昔の登山口と思われる荒れ果てた階段を見て、屋久島総合自然公園の駐車場に着く。屋久島自然総合公園は屋久島観光の穴場で非常に閑散としており、ヒッチも望み薄である。ここからは宮之浦川の両岸に道があるが市街地までは徒歩ならば湯川橋を渡って左岸を歩いた方がやや近い。左岸の道路はやはり森林軌道の跡だそうな。


クサギ
(北海道のものですが)

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(2005年10月29日上梓 2007年8月一部修正)