日高横断道路の化石永久凍土

 初めてカムイエクウチカウシ山に登った1998年8月の上旬に同年竣工の札内川ダム湖脇に新しく開通した「いたやトンネル」と「かしわトンネル」を自転車で通った時に、トンネル内が寒く、トンネルの内壁が結露して、多量の結露が古いトンネルから流出する地下水のように流れ出ていたのに驚いた。

 1999年夏にコイカクシュサツナイ岳に登る時は下手側の「いたやトンネル」は1998年同様だったが、上手側の「かしわトンネル」内の結露はなかったと思う。

 2001年夏に通った時は「いたやトンネル」の結露もなく、トンネル内が寒いということもなかった。

 これらのトンネル内の過去の低温は化石永久凍土を掘り抜いた故だったのだと思う。コイカクシュサツナイ岳登山道の夏尾根の1305m標高点の平坦地に以前は水場が「確かにあった」と聞いて、1999年夏にコイカクシュサツナイ岳に登った時に辺りを探してみたが、大雨の直後や雪解け直後なら水が流れていそうな草の生えていない砂利の小さな谷筋も見つけることができなかった。夏尾根の地下にも化石永久凍土があるが表層側から少しずつ融解して縮小しており、凍土層故に高かった地下水位が下がって水場が消失したのでないかと思う。

 1998年9月に国道273号線の糠平湖上手の丸山橋の北の袂の新しい法面工事の隙間に苔が生えて冷気が出ているのを見たが、2001年6月に通った時は冷気は出ておらず、苔も褪色していた。北海道の内陸のあちこちに化石永久凍土が埋まっているけれど、どんどん溶けてなくなっているのだと思う。氷河期にならなければいずれ溶けるものだとしても、開発が融解を早めているのだと思う。「いたやトンネル」の上の山でナキウサギが生息していたかどうかは分からないけれど、低標高でナキウサギが生息可能な環境は途中までの日高横断道でも消失したのだと思う。



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(2022年1月23日上梓)